オフプライスストア「&Bridge」オープン!
業態開発のキーマン3人に聞く!「今、なぜ、オフプライスストアなのか」
- 株式会社アンドブリッジ 代表取締役 松下 剛(右)
- 株式会社ゴードン・ブラザーズ・ジャパン 執行役員 原田 宜和(中央)
- 株式会社ティンパンアレイ 代表取締役 平野 大輔(左)

OPS業態を開発するきっかけは?いつから構想があったのですか?
松下:私自身の開発のきっかけは、2013年にTSUTAYAがリニューアルしたことで話題になった佐賀県の「武雄市図書館」なんです。オープン時にも伺ったのですが、その2年後再び訪れた時には朝9時の時点で併設のスターバックスでお年を召した方から若者まで20人くらいがコーヒーを飲んでいて、その後、次々に図書館利用者がやってきて、午前中で満杯になった。これ、なんかすごくいいなと思って。我々は小売をやっているので商売はしないといけない。でも、こんな風に気軽に人が集うお店を作りたいなというのが出発点なんです。武雄における図書館のように、地域に根ざしたコミュニティを育むお店を、ワールドでも出来ないかなという思いが入口の一つです。そのときは、まだOPSには全然つながっていなかったんですが、広域商圏よりも近隣のお客様に喜んでもらえるようなお店をいつか作りたいなという思いをずっと持っていて、今回1号店の出店先として西大宮を選びました。


原田:私が最初にOPSを見たのは2001年です。前職のアメリカ研修で2、30店舗を見てまわった中で、「ROSS(ロス)」と「T.J.Maxx(T.J.マックス)」を視察していました。その後、2011年にGBJに入社して、いろんな会社の在庫の換価を行うことになり、アメリカへ出張したとき、「あのときの業態ができるもしれない」と漠然と思うようになりました。そして2017年頃、松下さんとまったく違う商売で一緒するようになった際、その発想を投げかけ、およそ2年を経て今回の取組みにつながりました。
平野:ティンパンアレイは二次流通をやっているので、アメリカでOPS業態がすごく拡大しているということは前々から聞いていました。アメリカの市場は、リユースでも高単価商品の人気があって、日本の市場とはちょっと違うんですよね。ただ、アメリカで流行ると必ず日本に来るので、どういう風にOPSが動いているのかと興味は持って見ていました。そして、昨年、ワールドグループでもOPS業態に取り組むということで、一緒にやらせていただくことになりました。

海外のOPS業態について教えてください。日本でのビジネスチャンスは?
原田:海外のOPSは、アメリカの「ROSS」と「T.J.Maxx」が2強です。「T.J.Maxx」はヨーロッパとオーストラリアにも展開しています。米国のみの売上になりますが、「T.J.Maxx」で年商4.3兆円、「ROSS」で1.7兆円という大きな市場です。日本の皆さんが想像されているよりもOPS業態の市場規模は大きい。なぜそこまで大きくなったのかというと、彼らは小売業であるということです。よくアウトレット業態とOPS業態とが混同されるのですが、そこが大きく違います。アウトレットは、ブランドが自社の在庫を安く販売すること。それに対しOPSは、小売業態がブランドやメーカーの在庫を仕入れて安く販売することです。アメリカやヨーロッパの市場は、二次流通が日本よりも早く発達しているのと、お客様は場所を選ばず、自分の価値でモノを買う。ある意味、ファッションに対する成熟度が日本より高く、そういう面からマーケットが発達してきたんだと思います。翻って、日本ではアウトレット業態が大きくなってきました。1980年から2010年くらいまでがピークで、そこからピークアウトしてきています。優勝劣敗がついてきているのでこれからは、アウトレット業態だけだとなかなか賄えない。また、供給側から見ると日本市場はシュリンクしてきているのでモノが余っている。これを放っておくと、在庫の価値がつかなくなってしまい、マーケットとしても運営が難しくなってくる。この両面から、日本でOPSという業態が出来るのではないかと思いました。

平野:ユーズドセレクトショップを展開するティンパンアレイも含めて、これまで日本では二次流通についていろいろと制約があったのでやりづらい面があったと思うんですが、サステナブルの流れとモノが余っている状況もあり、かなり時代にマッチしてきているんじゃないかと感じています。そして、「&Bridge」として国内では早い段階でOPS業態を開発し、かなりの規模を視野に入れて取り組めそうだと思うので、これはいけると思っています。
松下:メーカーはシーズンで商品を売っていますが、シーズン落ちの在庫やリユースの古着屋を「二次流通」と言うんですよね。もともと日本は質屋文化。江戸時代の呉服屋さんもそうでしょうね。一方、アメリカの二次流通は、ビンテージといわれるジーンズからですよね。
平野:そうです、だから価値がついている。日本と逆なんです。ビンテージだとより高くなる。そういう文化が日本より早く広がっている。
松下:古着については、メルカリの台頭もあって選択肢の幅が広がっている。特に若いお客様は自分の持っている服を売って、買って、変えていっている。汚い、臭いという20年くらい前の古着と、今はまったく違ってきています。
OPS業態は、ファッション業界の産業ロスの課題をどう解決するのですか?社会的な意義は?
松下:社会的な意義という面では、最終廃棄していた商品や溜まっている在庫等、無駄になっている資産のロスを無くすことが出来るということ。ブランドの価値を眠らせておくのではなく、もっとお客様の近くに届けられるような店があればそれが解決できると思います。

平野:二次流通イコール劣化品みたいなイメージを持たれているかもしれませんが、そうじゃないんです。二次流通には、モノはいいんだけれどたまたま選ばれなかった商品が来ているだけなんです。やはりいいものはいい。だから、単に余ったモノを安く消化する場というのではなく、お客様にきちんと価値を届け、洋服の楽しさやファッションの良さを気軽に知っていただける場なんです。普段は高くて手が届かない商品が「&Bridge」で安く買えて、着てみるとこんなにいいんだと気付き、そのブランドのファンになっていただける。それがひいては、プロパーで販売する一次市場も盛り上がってと、いい循環になっていくと思うんですよね。ユーズドセレクトショップ業態であるうちもそうだし、OPS業態でも、価値をちゃんと付け、お客様に届け、ファッションの楽しさを知って頂けるように意識してやっていきたいと思っています。
原田:社会的な意義を一言で言うのは難しいんですが、これから日本の人口が減っていく中で、アパレルメーカーや小売業にとって大切なリソースである人材、スタッフは、プロパーの商売に当てるべきであって、アウトレットや在庫の処分には当てづらくなってくると思います。どの会社にも付加価値を付けられる領域と付けられない領域が必ずあるはずです。アパレルメーカーについては、いいデザイン、いい品質、いい売り方、この3つは付加価値が付くのですが、残った在庫をどう売ろうかという業務には付加価値が見い出しづらいはずです。そこに向けて、自社でたくさんの人が関わり、手を変え品を変えやっていても、20年後、企業が当てられる人材リソースは半分くらいになる可能性もある。しかし、OPS業態のプラットフォームがあれば、自社でアウトレットを持たなくても在庫処分が出来る。ワールドは別ですが、一般的にはそういうことが可能になってくるので、企業の従属性は、ある程度担保できるのではないかと思います。そうすると、付加価値を付けられない領域は、このプラットフォームを使って、売り買いで終わりにするのが合理的な判断ではないかと思います。
W×GBJがタッグを組んだ日本版OPS業態「&Bridge」1号店。どんな店舗になるのですか?魅力を語ってください。
松下:わかりやすくて買いやすい。けれど買いやすいというのは、きれいに見えるだけではなくて、宝物探し的にいろんな商品を自分なりに選べるような売場設計にしています。たぶん西大宮の1号店は、ワールドの人達はこれまで見たことがないような新しいお店だと思います。このお店、実はものすごくローコストで作っているんです。高くお店を作ると、その分回収するために儲けないといけなくなり、結果的にお客さんにいいものを安く提供できなくなってしまう。だから、販管費も含めてコストは抑えていき、その分をお客様に還元していけるお店にしていきたいねと、店作りの段階から原田さんと何度も議論してきました。だから店舗の内装の費用は普通と比べると1/2か1/3くらいじゃないですか。


そして、うちのメンバー、GBJのメンバーと店の開発について、こんな店にしたいという話を何度もしながら、キーワードをいっぱい拾っていったんです。たとえば、ビルの建築工事で使われる単管パイプを使ったら面白いんじゃないかというアイデアや、アンティークの家具、コーヒーメーカーから入手した古びたブルーマウンテンの樽を飾ったり。ローコストですが、ワールドのVMDのチカラはすごいですよ。あと、宝探し的なMDとかVMDをやろうと。だから、ブランディング力を訴求するようなブランドの表記はしていません。OFFシールを貼っている上代10万円のインポートの横に2,000円のロワー系の商品があったり。お客様が自由に選び、フィッティングに持っていって、自分なりのファッションを楽しんでもらえる店にしたい。もちろん、インポートの売場もちゃんと設けます。MDについても、売れ筋をたくさん積んで売っていくというのではなく、1SKUは2枚とか3枚で、売れたら次の商品が入ってくるという、宝探しのようにそのとき見つけた商品は、次にはもうないかもしれない、そんなお店です。また、ポップアップの売場では、新しく展開するブランドの紹介や、近隣のお菓子屋さんが出店したいと言えば場所の提供も考えています。地域の方とのコミュニティの場にしたいので、店内にはコーヒーサーバーを用意してフリーで楽しみながら人が集まる場所にしたい。音楽も60年代から80年代のジャズを流し、壁面には、「&Bridge」からお客様に伝えたいメッセージが書かれている。平日に来られるお客様にはゆっくりと、週末は家族皆で滞在してもらい、家族や地域のコミュニティが図れ、何度も通いたくなるような、人に寄り添うお店にしたいなと思っています。

原田:扱う商品は、アパレルは、メンズ、レディス、キッズから、バッグ、靴、ストール、帽子、手袋などのファッション雑貨、生活雑貨は調理器具などのキッチン雑貨や清掃雑貨まで。コスメは、フレグランスや流行のものをバイヤーが集めています。また、タオルやインテリア雑貨、外資の時計やジュエリーまで幅広く取り扱います。
ティンパンアレイのノウハウはどのように活かされるのですか?
平野:ティンパンアレイでは約5,000ブランドを取り扱っていますが、OPS業態も取り扱う商品数がすごく多いので、うちのノウハウがMDの面で何かお役に立てるのではないかというのが一つです。具体的には、「RAGTAG(ラグタグ)」はリユース事業ですので、市場の動向を見ながら欲しいブランドを仕入し、店舗の立地にあわせて仮説を立ててMDを組み立てています。これまで培ってきたMD設計を「&Bridge」でも活用できるのはないかと考えています。もう一つは、商品の管理です。商品数や店舗の増加、さらにECもやっていくと考えたとき、商品を一点ずつ管理する必要が出てくると思います。うちは年間70万点くらい仕入れていて、商品すべての一点管理をやっているのでそういうオペレーションやECの構築、ささげも含めて、これまでのノウハウが活かせれば、取扱量が多くなっても対応できるのではないかと思っています。この2点で上手く連携し、お互いのシナジー効果につなげていきたいと思っています。

松下:ティンパンアレイは、一点一点を調達してバイイングして、それを編集して売っていくという本当の小売のノウハウがある。だから、僕らは逆に勉強させてもらっています。日々、勉強です。
GBJ×ワールド。お互いがパートナーに選んだ理由は?
原田:これまでもワールドと取引があり、そこから横展開していろんなビジネスを考えてきて、お互いに信頼関係を築いてきたという心象的な理由が一つです。もう一つは、私たちGBJとしても、自分たちでお店を出して小売に取り組むというのは、これが初めてなんですね。今回のOPSを成功させるにあたり、我々の弱みは人と店舗オペレーション。もっというとブランドオペレーション、ブランドの構築のノウハウは持っていない。それを成し得ていただける先と考えていくと、そこでもやっぱりワールドだったというところで、今回、「&Bridge」を一緒に取り組むことになりました。
松下:GBJは圧倒的なメーカーとの取引数を持っているということと、そして何よりも人です。GBJのメンバーと知り合えたこと、つながれたことが、この新しいOPS業態の開発になったと思います。かっこいいように言ってるんですけれど、本当です。縁かな。それこそ「&Bridge」ですね。社名であり店舗名である「&Bridge」という名前には、企業の価値ある商品をお客様に繋ぐ“架け橋”になることに加えて、企業同士を繋ぐ意味も込めています。これね、皆で3週間くらいかけて夜遅くまで350くらい案を考えたんですよ。この業態というのはそもそも何だろうというところから出し合って、出てきたキーワードが「つながり」。企業の価値ある商品を消費者につなぐ。そこから「ブリッジ」「橋」にしようと。そして、橋と橋、店と消費者をつなぐ“架け橋”ということで、「アンド」を付けようと「&Bridge」になりました。
最後に、ワールドグループ社員に向けて、オフプライスストア業態「&Bridge」1号店のPRをお願いします。
<profile>

株式会社アンドブリッジ 代表取締役社長 松下 剛(まつした つよし)
1982年 ワールド入社。「ジオスポーツ」など、卸事業において営業を経験した後、ストア業態においてMDや販促を経て、1998年からワールドのアウトレット業態「ネクストドア」に立上げ時から参画し、業態開発を牽引。屋号長(責任者)を経て、2019年8月1日、アンドブリッジ代表取締役社長に就任。

株式会社ゴードン・ブラザーズ・ジャパン 執行役員
アセットソリューション部 シニアマネージングディレクター 原田 宜和(はらだ のりかず)
株式会社しまむらにおいて、婦人服・アクセサリー・雑貨のチーフバイヤー、店長を経て、2011年にゴードン・ブラザーズ・ジャパン入社。リテール・セクターを担当し、ソーシング及びプロジェクトマネージャーとして多数の換価プロジェクトを担当。

株式会社ティンパンアレイ 代表取締役社長 平野 大輔(ひらの だいすけ)
客として通っていた「ラグタグ」の高い接客レベルに感動し、1999年、ティンパンアレイ入社。千葉店、原宿店を皮切りに店長を歴任。2005年、関西1号店となる心斎橋店の立上げに携わり、その後、大阪、神戸の出店につなげる。2013年に全店舗の店舗統括、2014年に執行役員を経て、同年6月に代表取締役に就任。






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