Fashion×Technology:PART1~UNBUILT TAKEO KIKUCHI開発キーマン対談~

好き

キーマンに聞く、UNBUILT TAKEO KIKUCHI開発秘話とこれから

昨年12月、多様な働き方を体現する次世代のビジネスマンに向けて誕生したUNBUILT TAKEO KIKUCHI。ファッションテックという言葉も一般化してきたように、ファッションとテクノロジーは今後より進化し、深化していく分野です。今回の特集では、ワールドグループでその先駆けとなったUNBUILT TAKEO KIKUCHIの開発からブランドの立ち上げまでを手がけたキーマンのおふたりの対談をお届けします。

株式会社エクスプローラーズトーキョー アンビルト タケオキクチ屋号長 江口智貴さん

株式会社オムニス 代表 上田徹さん

株式会社オムニス 代表 上田 徹さん(左)と アンビルト タケオキクチ屋号長 江口 智貴さん(右)
アンビルト タケオキクチ渋谷の前で

■昨年12月にデビューしたUNBUILT TAKEO KIKUCHI。ブランド構想のきっかけは?

 

江口:私が所属していたタケオキクチの主戦場は百貨店で、若い方を中心に百貨店離れが進み、館自体が減ってきている環境の中で、次世代に向けた業態開発が必要ではないか、ということでチームメンバーで構想を始めました。メンズのビジネスウェアマーケットではオーダースーツが伸びているということもあり、そこにチャンスを見出そうとプランを練りはじめたのが2017年初頭。オムニス社と共に実質的な開発を始めたのはその1年後です。当時、オーダー業界では「2着目はウェブでオーダー」というのが、キーワードになり始めた頃でしたので、そのサービスを軸に据え、どのように差別化するかを考えました。

働き方改革が進み、多様な働き方が広がる中で、スーツを制服として受動的に着て働くことは一世代前の働き方の象徴でもあり、次世代のビジネスマンは嫌悪感すら持っています。そこをアップデートして、働くことを楽しくするサポートをしたいと考えました。能動的にビジネスウェアを選択するということを大切し、ビジネススーツからワークカジュアルまでを個々のライフスタイルに合わせてオーダーするということを差別化として考えてきました。

 

上田:先日、中国に行ったんですがほとんどの人がスーツを着ていなくて、着ていたのは政府系の仕事をしている人たちばかりでした。一般的なワーカーはスーツじゃないんですよね。そもそも日本でスーツを着るようになったのって、イギリス文化からですか?

 

江口:そうですね。戦後、西洋文化を取り入れていく中で日本のビジネスシーンで広がって、その状況が長らく続いてきました。クールビズあたりからネクタイをしない、さらにジャケットすら着用しない“シャツ族”が増えてくる中で、もう少しこなれた着こなしをしたいと思いながらもどう崩したらいいのかわからないという声をたくさん聞きました。そこで、アンビルトはコンテナを用意してビジネスからワークカジュアルまでのグラデーションでスタイリングを見せるというやり方にしたんです。

 

 

店内には多様なコーディネートを提案するコンテナが並ぶ

■企画とシステム開発をどう連動しながらプロジェクトを進めていったんですか?

 

江口:オムニス社と出会うまで様々な企業と会話をしてきたんですが、莫大な予算とロングスパンのスケジュールのところが多く、いざ動こうと思ってもなかなか思うようには進みませんでした。でも上田さんたちと出会い、話をしたらスピード感も予算感覚も他とは全く違ったんです。それで「一緒にやろう!」ということになり、一気に走り出しました。

 

上田:僕らはITベンチャーなので、2、3人のミニマムで進めていきます。スピードを重視し、サービスを展開しながら改善を加えていく。「飛行機を飛ばしながらつくる」という考え方です。鮮度の高いサービスを早くユーザーに届けることを目的にしていて、そこはスピード感の速いITベンチャー業界ならではなのかもしれません。いまや世界的な大企業であるGoogleやFacebookも最初はミニマム。基本的には同じような考え方なんですよね。

 

■企画を進行しながら、ハード面の開発をフィットさせていく。言葉にすると簡単ですが、実際は大変だと思います。どう進めていったんですか?

 

江口:最初は上田さんからの「これをやってほしい」というリードに乗って、ひたすらやらせてもらいました。そこはもう全幅の信頼を置いて。というのも、上田さんは僕たちがやりたいと思っていることをしっかりと研究してきてくれていた。他のシステム会社だと「そもそもオーダースーツとは?」「オーダースーツの市場とは?」というところからスタートして、最終的に目指すところを説明するんですが、なかなか理解されないことも多かった。でも、上田さんはすでに土台がインプットされていて、「はい、この方向ですね」と企業、業種の壁を感じることなく会話ができた。目線やレベル感が互いに近かったので、結果的にクイックに進められたんです。

 

上田:ファッションテックの領域は全部見ていました。そういう意味でその領域のシステムに関しての土地勘はすごくありましたね。あと、ファッションに関しては、昔、僕自身も故郷の熊本で販売の仕事をしていたことも少しは関係するのかな。

■アンビルトが生まれるまでの1年半。どんな日々でしたか?

 

江口・上田:(声をそろえて)いやいや、それはもう。いろいろあって大変でしたよね(笑)。

 

江口:プロトタイプをつくるまでの3ヶ月はすごく楽しかった!上田さんと右腕の添田さんと一緒に進めながら、毎日どんどん進化していくのが肌でわかって、エキサイティングでした。

 

上田:とにかく一緒にいる時間が長くて(笑)。大変だったけど、楽しかったですよね。

 

■オープンしてまもなく1年。お客様からの声やニーズは?

 

江口:タブレットを使って全体を把握しながらオーダーすることを、とてもおもしろいと感じていただいています。オーダーフローについては、ひとつずつ細かく決めたい人もそうでない人もいるので、その振り幅は意識しています。丁寧でありながらも敷居は下げたいと思っているし、“簡単便利”も意識して合理的にできるようにしたい。オーダーの中の振り幅を持ちながら、お客様にフィットしたコミュニケーションを取っていきたいと思っています。最近はターゲットとしているクリエイティブに働く方々も多く来店されており、IT系のデザイナー、コンサルや企業の経営層、外国籍の方もいます。

 

上田:僕自身を含めて僕のまわりのITベンチャーの仲間はTシャツ、短パン。たまーにジャケット、かなぁ。ゆっくりと買い物を楽しむ時間は日常の中であまりないので、ユーザビリティが高いウェブオーダーはいいですよね。

 

江口:精神的な軽さはキーワードですよね。アンビルトのメインビジュアルもそれぞれの生活に合う、自由と創造性を大事にしていて、建築家の方や、雑貨屋さん、映像制作している方、メガネ屋さんなど多様な方が登場しています。渋谷には軽やかに働く次世代のビジネスマンが集いますが、アンビルトが渋谷にある意味もそこにあります。渋谷スクランブルスクエアなどの新しい施設もできて、この場所はこれからますますおもしろいですよね。

 

■「ファッションテック」という言葉をいろんなところで聞くようになった昨今。ここ数年でファッション×テクノロジーはどう変わってきましたか?

 

上田:アマゾンの存在が大きいですよね。エンターテインメントはもちろん、様々な領域に進出していて、しかもそれぞれのジャンルで新たなベンチャーがどんどん吸収されていっています。そんな中、ここ3年でアマゾンが急速にファッション産業に入り始めました。アメリカ本国ではボディテックをはじめ、様々な投資をはじめていて、その影響は他の小売に顕著に出てきています。その波は日本にもきていて、すでに影響は出始めていますよね。そういう意味ではテクノロジーの進出でファッション市場が大きく変わっていることを肌で感じます。

 

江口:そうですよね。ファッション業界に17、8年いますが、テクノロジーという文脈はここ数年です。その数年で感じるのは、テクノロジーのこともありますが、そもそもファッションにおける“かっこいいの基準”が変わってきているということ。かつては、DCブランドが流行り、その後は裏原宿に代表されるストリートへというように、その時代ごとのトレンドが強く洋服に反映されていました。今もないわけではないですが。アンビルトの構想が始まったくらいからファッション、トレンドが洋服だけではなく、ライフスタイル全般に広がっていき、より自分に合った生活を過ごすことが大切でかっこいいと言われる時代になってきていると感じます。その中でアンビルトは「等身大」ということを大切に考えて、憧れのオーダースーツというよりも自身のライフスタイルに近いビジネスウェアを提案しようと進めてきました。

ライフスタイルを提案するVMD

■ファッション×テクノロジーというキーワードでこれからやってみたいことは?

 

上田:大きなスコープでみたとき、デジタルライフがいよいよ本格化してきますね。今、AI、VRや仮想空間というミラーワールド(現実を完全にコピーさせた世界をネット上につくる)などの世界観をリアルタイムで同期させる技術が発達してきています。デジタルの世界と現実の世界がいよいよシームレスになってきて、それが重なり合ってくる時代です。現に300人規模の企業でありながら現実にはオフィスがなく、VR空間にオフィスをつくってミーティングをしたりカンファレンスをしている企業も生まれてきています。来年には5Gが整備。高速通信網が出てきて、僕らが夢みていたSFの世界が現実になってきます。ファッションの世界でも、VRで完全にシミュレーションされた店舗も今後出てくると思います。今、すでに店舗をリアルタイムでトラッキングするタグがあって、誰がフィッティングに入り、誰が何を着ているのかをVR空間で再現できる技術もあります。現実の店舗とリンクしながら、デジタルとシームレスになってくるのは楽しみですし、その分野での新しいムーブメントをつくっていきたいですね。待ちに待った時代がいよいよ来たと、とてもワクワクしています。

 

江口:上田さんが語るデジタルと現実の話、すごいですよね。僕が個人的にやりたいのは、物であれ技術であれ、新しいものを取り入れていくけれど、その一方で失ったり、見えなくなっていくものもあると思うんです。だから、今の旬と過去の旬を組み合わせて掛け算する視点を持って、新たな価値を同時に見出していきたいと思います。たとえば、アンビルトで販売しているこのノート。実はステイショナリーではこれが意外と売れているんです。

昔なつかしい「業務ノート」

江口:昔のものが若い人や外国人の方には新しく、おもしろいものに映って手に取ってくれる。スマートなものと昔のものが共存するおもしろみですよね。古い新しいというよりも、今、何が旬なのかを見る目と価値観を持ちたいですね。もちろん、進化を続けるデジタルの世界についても勉強しますよ(笑)。

上田:デジタルに限らず、まずは好奇心を持つことですよね。先入観を捨てて、知らないことを億劫だと思わずに、新しいモノ、コトはどんどん取り入れて、自分が歳をとらないようにしたいと思っています。若い世代のことでわからないことはたくさんありますが、見て見ぬふりをしないことが大切だと思っています。自分だけでわかったつもりになると勘違いも多いので、そこはオムニスの若い世代から教わっています。それと同時に江口さんが言うように、自分たちが経験から培ってきたものはあるので、それを組み合わせていくのが大事かな、と。若手メンバーから教えてもらって僕自身もがんばって新しいデバイスやソフト、アプリを使ってますよ。新発見もありますし、僕も江口さんもファッションとテクノロジーが本格化するこれから、若者にアップデートしてもらいながら楽しんでいきましょう(笑)

江口:最後に、まだまだアンビルトは未完成で課題が多く、世の中に受け入れられておりませんが、色々な方のご協力の下、日進月歩で進んで行っています。ワールドグループ社員の方々には、共に育てる視点で、是非、ご利用いただき、ご意見をいただければと思います。

>>次回PART2は、アンビルト タケオキクチで実際にオーダー体験をした社員をレポートします。お楽しみに!

コメントはこちらまで

新着記事

  • あの日の記憶を次世代に伝える  ー 阪神・淡路大震災 30年

  • 2月22日(土)開催!よみうりランド招待イベント 「ワールド スペシャルデー!」 ★参加申込 受付中★ 

  • 「WORLD GALLERY」写真募集スタート -ワールドグループの皆さんの活動を、写真でシェアしてください!

  • 全国美味いもん探しの旅 🎍 お正月編 🎍

  • 表彰店舗・ドレッサー紹介 🏆 今月は「リフレクト」京阪百貨店守口店、「リサマリ」 アトレ亀戸店 蜂谷 ゆりなさんにインタビュー!