ファッション界のキーマンが語る
“現在と未来、そしてワールドのこと”

好き

激動の1年だった2020年。ファッション業界も様々な面で大きな変化を遂げました。FEATUREでは2回に渡り、ファッション界のキーマンが語った「マーケットの今と未来」、そして「ワールドへの想い」をご紹介します。前編の今回は、WWDJAPAN.comの村上要編集長とifca showroom代表の斉山陽子さんです。

斉山陽子さん/ifca showroom代表

PROFILE
さいやまようこ/ifca showroom代表。東京都出身。大規模なプロモーションを経験後、2009年にIfca showroomの母体である株式会社PA Communicationに入社。PRの戦略立案からプロモーションまで多岐に渡ってプロジェクトを統括。 またワールドにてaquagirl ON THE STREETの商品企画を3年経験。2009年にはカンヌ国際広告賞の銀賞を受賞。現在は日本とアメリカの2重生活を送る。

Z世代に向けた動きが、さらに活発化するはず

――コロナは、ファッション業界にどのような影響を与えたでしょうか?

新型コロナウイルス前までは”デザインが好き”だけで買い物をする理由になりました。でも当たり前の未来が当たり前ではなくなった今、買い物の理由は何であるかの厳しい問いを、私達は突きつけられています。 それに対して向き合うか、見ないふりをするかの二択です。

――コロナによってこれまでにない新しい発見、新しい形は生まれましたか?

DX=デジタルトランスフォーメーションもといPX=パーソナルトランスフォーメーションの時代の到来です。コロナ後、時代をサバイブするスキルが必須となりました。優先順位が変わり、役職が役職の意味を、都会が都会の意味をなさなくなってしまった。マインドフルネスなど自分にとっての心の動きに敏感になった今の私達は、新しく、そしてとても魅力的で強いです。

――2021年以降、ファッション界はどのような流れになるでしょうか?

大きい変化は水面下で起こっています。今後絶対に無視できない勢力に成長するのが、1995年から2010年の間に生まれたZ世代。その購買力は1430億ドルに達し、国際貿易戦争を再燃させるほどのパワーを持ち世界人口の3分の1を占めています。ゲームやEスポーツをはじめオンライン上のコミュニティを通じて、さらに繋がりを構築する世代に向けた動きは活発化するはずです。

――コロナによって働き方が大きく変わったと思いますが、良かった点、悪かった点を教えてください。

今までのシーズンが上手くいってない訳ではないし、楽しくもあった。でも、全てがつながっていたことで何かマンネリ化していて、忙しい毎日が繰り返されていた。良かったことはそれが1回リセットになったこと。一方で、悪かったことも1回リセットになったこと。地球はひとつにつながっていて、実は小さいということに気づかされた。それでは働くことに対し、何を選択することが豊かで心地よいのかを見直す機会に。

 ――あなたにとってワールドとはどのような会社でしょうか?

私のアパレルの基礎の全てを作ったともいえる原点。今、私がアパレルやヘアコスメブランドで戦略パートナーとして多数指名を頂き活躍できているのも、グローバルの目線が持てているのもワールドでの人脈や経験があったからです。私はワールドのメンバーの一員であることに常に誇りを持っていました。それは生涯忘れることはありません(aquagirl ON THE STREETの商品企画で3年間の在籍経験があります) 。

――あなたが今後ワールドに望むことは?

顧客のライフスタイルシフトにいち早く反応しながら、“豊かな消費の仕方”を先導する役になって欲しいです。豊かな消費をする顧客と、顧客に豊かな消費を提供する他の企業を支援していくことで、いつか未来は変わります。“ワールド”という名前の通り、その支援をする“世界”的企業になることを望みます。

村上要さん/WWDJAPAN.com編集長

PROFILE
むらかみかなめ/「WWDJAPAN.com」編集長。
静岡県出身。静岡新聞社会部の記者を経て、渡米。帰国後、株式会社INFASパブリケーションズに入社。2017年4月から現職。ファッションとジムをこよなく愛す。

多様性が推進され、刺激的な業界へとさらに進化する

――コロナは、ファッション業界にどのような影響を与えたでしょうか?具体的例などあれば教えてください。

与えた影響は数知れず、だと思います。緊急事態宣言を含むロックダウンで加速するデジタルトランスフォーメーションから、心地よさや機能性などを求めるニーズの活発化、更にはオンラインMTGにおける背景を含むフレームや“あつ森”に代表されるアバターなどのファッションの拡張性まで、数えればキリがありませんが、一言で言えば、すでに進行していた変革が加速した、もしくは、やるべきが改めて浮き彫りになったのが、コロナがファッションに与えた影響だと考えています。

――コロナによってこれまでにない新しい発見、新しい形は生まれましたか?

 これを機に本気で向き合いたいのは、オンラインMTGのフレームや、アバターに代表されるファッションの拡張性です。ファッションは、自己表現に関するコミュニケーションの全て。古くはスマホケースやLINEスタンプもそうですが、「ファッションは、洋服だけじゃない」という感覚を、洋服屋だった私たちがどれだけ共有できるか?でアパレル業界の将来は決まると思います。その感覚を持つことができれば、ファッションはあらゆる産業と融合し、その感覚を持ち得なければ、孤立し衰退するでしょう。

――2021年以降、ファッション界はどのような流れになるでしょうか?大きな変化は起こるのでしょうか?

パリコレ的な、旧態依然としたシステム以外の可能性に注目が集まると思います。巨大なシステムは、急速に衰退することはないと思いますが、「変わっていい」「そこに依存しなくて良い」「そのシステムに加わることだけが唯一の生き残り手段ではない」というフラットな感覚が広がると、多様性は推進され、刺激的な業界へと進化できると思います。

――コロナによって働き方が大きく変わったと思いますが、良かった点、悪かった点を教えてください

所属し、一カ所に集い、働くという主流以外の働き方が生まれたのは、大きな可能性だと思います。悪かった点は、あるでしょうか?正直、あんまり想像できません。在宅から副業に至るまで、働き方が選べるようになるのは、「自分らしく働く」というインクルージョン&ダイバーシティの観点において、絶対的なプラスだと思います。

――あなたにとってワールドとはどのような会社でしょうか?

多くの国内アパレルが、モノにこだわり、DXやサステナが手段ではなくゴールになってしまっているように見える中、ワールドの、こと新領域へのチャレンジは、カスタマーにこだわることで未知に挑戦する意欲のように感じています。かつての業界最大手が変わることにも意味があると思っています。

――あなたが今後ワールドに望むこと

今回、WORLD FASHION ACADEMIAというセミナーをご一緒させて頂き、さすがの影響力というか、一声かければ色んな方を巻き込めるパワーを実感しています。今後も、変革する業界の牽引役を担ってほしいです。一緒に、業界の背中を思いっきり押していきましょう!

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