お客様目線の店づくり~VMDレッスン初級編

好き

アパレルの人気職種のひとつであるビジュアルマーチャンダイザーこと、VMD。商品の見やすい陳列方法や配置を考えるプロの彼らは、普段どのようなロジックでディスプレイをしているのでしょうか。そこで今回は、知っておいて損はないVMD学をご紹介します。

VMDについて教えてくれたのは、この方

浦川仁さん

(株)ワールドスペースソリューションズ

1982年、株式会社ワールドに入社。VMDとして国内外において、衣、食、住、遊とアパレルの枠を超え活動を行う。社外の企業との取り組みが多く、空間プロデュースからインテリアプロデュース、さらにはVMDのコンサルティングや研修など、多岐にわたり活動。現在は文化服装学院の講師として教壇にも立っている。

そもそもVMDって何?

ディスプレイを作ることだけがVMDの仕事ではありません

ご存知の方も多いと思いますが、VMDとはVISUAL MERCHANDISING(ビジュアル マーチャンダイジング)の略で、その名の通り、視覚的に商品政策を行うという意味です。じゃあ、どんな仕事をしているの?と聞くと、大半の方は「売りたい商品を視覚効果で見えやすくし、買いやすくすること」という答えが返ってきます。もちろんそれは間違いではないのですが、VMDは商品政策(MD)、商品政策表現(MP)、店舗環境(SD)、販売促進(SP)の4つの要素で構成されています。つまり、これら4つの要素がひとつでも欠けてはいけないですし、これらの要素すべてに関わって、計画を立てるのがわたしたちの仕事です。

知ってて損なし!VMD基本の“キ”

4つの要素で構成されるVMDですが、メインの業務はやはりディスプレイなどの視覚的効果を駆使すること。ここでは、VMDの基本となる4項目をご紹介します。ドレッサーのみなさん、必見です!

①お客様の購買行動プロセスを知る

まずはお客様はどういうプロセスで商品を購入されているのかを知っておきたいです。下の表にもありますが、入店して商品を認知し(Attention)、関心を抱かせ(Interest)、欲しいと思っていただき(Desire)、商品名などを記憶させ(Memory)、そして購入(Action)という流れが基本です。私たちは、この頭文字をとってAIDMA(アイドマ)と呼んでいます。このプロセスを是非覚えていただきたいですね。ただし、現在はインターネットが普及したことでECでの購買も増えています。それによって変化した購買プロセスが下にあるAISAS(アイサス)です。

②視線と目線を知る

視線と目線、同じようにとらえてしまいがちですが、前者は“目で見る動きを表す”こと、そして後者は“目で見る位置や高さ”を意味しています。下の図のように、人は近くを見る場合、目線中央→左から右→目線中央から下→目線中央から上、という視線移動の習性があります。それをふまえて、商品を並べることが重要です。ちなみに遠くを見る場合は、目線中央→目線中央から上→目線中央から下と、近くを見る場合と上下移動が逆になります。人の習性って面白いですよね。

③商品が見やすく、手に取りやすい位置を知る

見やすい高さは、女性が600~1300mm、男性が400~1400mmといわれており、通称『ゴールデンスペース』と呼ばれています。また視野の幅はおよそ120度、長さでいうと1500~2000mmとされています。この高さと幅を知っておくことと、どこに売りたい商品を置けばいいのか、わかってくるのではないでしょうか。

④VMDに不可欠な4W2Hを知る

5W1Hということばはよく耳にしますが、VMDの場合は4W2Hが基本となります。何を(What)、誰に(Who)、いつ(When)、どこで(Where)の4Wと、どのくらい(How Many)、どのように(How To)と2Hです。Howがより具体的になるのがVMDの特徴です。これら6項目をふまえ,様々な商品政策を行っていきます。

浦川さんが考える、VMDの今、そして未来

モノ消費、コト消費と移行し、現在はエモ消費の時代

まずは現代の消費の変化を知っておくべきですね。

消費の変化というのは、どういうことでしょうか?

例えばですが、戦後と現在では商品の多さって同じですか?

いえ、明らかに現在の方が多いです。

ですよね。時代の変化によって、消費の方法も変わっているんです。画期的な商品が続々とこの世に生まれた1950年代の高度成長期はモノ消費と呼ばれています。モノの所有に価値を見出す消費行動つまりは所有価値が大事でした。

なるほど。所有価値を満たした人々は、次に何を求めていくのでしょうか?

次は、そのモノをどのように使い、暮らしを豊かにするのか、ということを考えるようになります。それがコト消費時代です。これは1990年代後半からといわれています。購入によって得られる経験やサービスに価値を見出す消費行動、つまりは「体験価値」が重要視された時代です。

では現在は、どのような時代なのでしょうか?

この世に商品が溢れる中、人々が何を求めるのか。ただ商品を購入して使うのが当たり前の行為であれば、さらに異なる付加価値を求めるようになります。それが精神的な満足感を重視する精神価値なのです。つまりエモーショナル(感情)な消費ということになります。

エモーショナルとは、例えばどのようなことでしょうか?

最近の一番わかりやすい例でいうと、サステナブルですね。同じTシャツであっても、オーガニックコットンを使用していたり、売上金額の一部を寄付していたり、というようなブランドもありますよね。そういったエモーショナルな価値をもつ商品、そして売り方が現在の主流となっています。

消費の時代の変化はわかりました。では、そういった時代時代の変化をVMDとして浦川さんはどのように表現されているのでしょうか?

わたしたちワールドスペースソリューションズ(WSS)がビジュアルディレクションを担当し、現在NEWoMan横浜で開催されているイベント『246st. MARKET』を例にするのであれば、まずは什器ですね。

あの木製什器のことですか?

はい。この『246st. MARKET』で使用している什器は、サステナブルを意識して作られています。屏風のように折り畳んで収納できるため、様々な場所へ持ち運びが可能だったり、棚が固定されていないため、自由にカスタマイズができるなど、その時々に合った使い方ができるのです。できるだけ木を廃棄しないよう計算されたデザインになっています。

シンプルでありながら、様々なシチュエーションで使用でき、さらに再利用できるというのは素晴らしいですね。他にもサステナブルな観点で特徴的なものはありますか?

NEWoMan横浜の1階正面口にあるショーウインドーを今回お借りすることができたのですが、今回はフラワーブランド<gui flower design(グイ フラワーデザイン)>さんと共同で、フラワードレスや花のオブジェを制作しました。このドレスには、ロスフラワーを使用しています。

ロスフラワーというのは?

様々な理由で廃棄することになった花のことをいいます。それらを使用し、ドレスに見立てて、デザインしています。この春にもワールド北青山ビルの1階で<gui flower design>の前田有紀さんに作成していただき、5体のフラワードレスをディスプレイしていただいたんですが、その時も好評でしたね。

やはりエモーショナルな価値をお客様も求めているということですね。では、最後にVMDという業務をされる上で、今後やってみたいことなどあれば教えてください。

そうですね、社内社外を問わず、次世代を担うVMD担当者を育成したいですね。現在文化服装学院でVMDの講師をさせてもらってるんですが、社内でも育成ができればと思っています。わたしたちのチームは4人中3人が60代ということもあり、できれば早めに動きたいですね(笑)。

取材を終えて

今回浦川さんから様々なお話をうかがい、VMDの重要性を改めて実感することができました。綺麗にディスプレイすればいいわけでなく、視線の高さや幅など人間の習性を活かしたロジックで陳列しないとお客様には響かないということ。これはVMDのみならず、様々なシーンで活用できるのではないでしょうか。今回はVMDの基礎的なことをお伝えしましたが、いつか店舗のBEFORE&AFTERなどを例にした実践編をご紹介できればと思います。

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