季節と匂い
皆様、こんにちは。今回の広報ブログは石平が担当いたします。
皆さんは何かの匂いを久しぶりに嗅いだ時、今まで忘れていた記憶が蘇った、なんて経験をしたことはないですか?古臭い建物に入った時の匂いが、昔通っていた学習塾の匂いと似ていて、当時のことを思い出してしまう。電車の中で不意に香った香水の匂いで、昔一緒にいた人を思い出してしまう。そんな経験を、私は意外と頻繁に味わいます。
実はこの現象には「プルースト効果」という名前が付けられています。フランスの作家、マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』に出てくる、紅茶に浸したマドレーヌの香りから幼少時代を鮮明に思い出す、というシーンが名前の由来になっているそうです。
そんな匂いは、季節の変化もいち早く教えてくれます。季節ごとに大気の匂いは異なりますが、それは言葉で表すことができないほど繊細で、思い出すことも難しいです。しかし、ひとたびその匂いを嗅げば、その季節の記憶が瞬く間に呼び起こされます。
そこで今回は私の好きな季節の匂いについて、思い出も交えながら書いていければと思います。
初秋の金木犀

今回こんなテーマでブログを書こうと思ったのは、今年も街で金木製の匂いを感じるようになったのがきっかけです。マスク越しでも分かるほど強烈で、ただとても優しく甘い金木犀の匂い。一年ぶりにそれを嗅いで、毎年この匂いで秋の始まりを感じていたことを思い出しました。暑さも収まり「外を歩くのが気持ち良い季節になるなあ」という、ふんわりとした期待感に、文字通り“花”を添えてくれる、大好きな匂いの一つです。
真冬の早朝
真冬の早朝の匂いもたまりません。
思いっきり吸い込むと、冷気の混じった透明感のある匂いが鼻の奥を突きます。この匂いで思い出すのは飲食店で夜勤をしていた大学時代です。早朝に店を閉めてから帰路につき、埼京線の中で明るくなり始める空を眺めながら最寄り駅についた時、身体の疲れはピークを迎えていました。ただ、朝日を浴びながら、冷たい空気を纏った誰もいない街を一人で歩く、不思議な孤独感に気分が高揚してしまい、帰っても眠れない、なんてことがよくありました。大学生だからこそ味わえたあの不思議な感覚は、もう自分とは縁のないものになってしまったんだと考えると、少し寂しいです。

夏のにわか雨
にわか雨が降る前の匂いってありますよね。特に真夏の、つい数分前まで燦燦と降り注いでいた日差しを真っ黒な雲が遮り、大雨が熱された大気を押しつぶす準備をしている時の匂いは、映画が始まる前に似たワクワク感を私たちに与えてくれます。実家で母と一緒に暮らしていた時は、この匂いがすると親子で肩を並べて、窓越しに天候ショーを楽しんだものです。毎回「濡れてもいい格好になって外で遊んでくる!」と母に言って、必死に止められていたのは良い思い出です。

忙しない日々を送っていると、ついつい季節の変化に対して鈍感になり、知らない間に一年が終わっている、なんてことも少なくないはず。しかし、折角四季のある日本に生まれたのに、それでは勿体ないです。季節ごとの匂いに少し注意を傾けてみて、その匂いに紐づく思い出を振り返りながら、また新しい思い出を作りながら、ゆっくりと四季を満喫してみるのも面白いのではないでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
次回のナビゲーターは五十川楓さんです。皆様どうぞお楽しみに。






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