「ワールド×コオフク プロジェクト VOL.4」 視覚に障がいがある人の困りごとを捉え、皆で考える

好き

ワークショップでロープレをおこなうスタイルフォース 小崎さん(左)

任意団体コオフクと、障がいがある人が抱えるおしゃれの悩み・課題を理解し、成果発表を行う「ワールド×コオフク プロジェクト」。ワールドは4回目の取組みを2021年秋から今春にかけて実施しました。これまでは着用を考えたデザインの悩みを解決していましたが、今回は視覚に障がいのある方の買い物について、アンケート調査とワークショップを経て、店頭で買い物体験をおこないました。

「ワールド×コオフク プロジェクト VOL.4」ダイジェスト ※約15分

誰もが安心して、ファッションを楽しめる環境を

コオフクとの取組みは2019年の開始から4回目で、「買い物の困りごと」については初のプロジェクトです。

「特別なことではないパーソナルサービス」「支援ではなく共創」「見える人、見えない人のお互いの世界を知る」をテーマに、多くの実店舗を持つワールドグループとして、得た結果をカスタマージャーニーにまとめていきます。なお、今回携わるメンバーとブランドや店舗スタッフの代表者は「ユニバーサルマナー検定3級」を受講しプロジェクトに臨みました。

まずはアンケート調査を実施 

プロジェクト開催にあたって、視覚に障がいのある人の困りごとを捉えるためにアンケート調査を行いました。「買い物をする上で事前に知りたい情報」「これまで買い物しやすかった、逆にしづらかったエピソード」「買い物中の困りごと」「接客を受ける際の困りごと」をまとめたこのプロジェクトのベースとなるものです。

いよいよワークショップへ

ワークショップは、アンケート調査に協力いただいた、ユニバーサルデザイン及びユニバーサルマナーに関するリサーチを手掛ける株式会社ミライロの協力を得て、3月12日(土)に錦糸町丸井 ミライロハウスで行いました。

困りごとをブレストしていく。進行はスタイルフォース鈴木さん(左)
出た意見をもとにロープレを行う。弱視、全盲それぞれで対応も異なる

ワークショップでは、洋服を買う際の「困りごと」を皆で出し合ったのちロールプレイングを行いました。「同じ色でも薄いピンクか、濃いピンクかを具体的に知りたい」「ボーダーTシャツであれば、縞の幅を教えてほしい。色や柄、ロゴの位置まで詳しく」「そちら、あちらでは分からないので、クロックポジションを使って何時の方向と示してほしい」「品質表示タグに書かれている、洋服のお手入れ方法も知りたい」など、具体的な意見を蓄積していきます。

ワークショップ終了後にスタッフと共に。ミライロハウスTOKYO(錦糸町)にて。

ワークショップの意見を持ち、豊洲の「オペ―ク ドット クリップ」と「ザ ショップ ティーケー」で実体験

4月13日(水)から17日(日)までアーバンドックららぽーと豊洲の「オペ―ク ドット クリップ」と「ザ ショップ ティーケー」で買い物体験を行いました。ひとり1時間を想定し、入店からお聞きだし、お会計、お見送りまで一連の流れを経て、後日ご意見も伺いレポートにまとめていきました。

好きなテイストが明確なお客様も多く「似合う、似合わない」をはっきりと伝えてほしいという声が
幅やデザイン、丈は手を使って体感いただく。花柄は花の名前を知りたいという声も
どうしてもモノトーンを選ぶので「普段着ない明るい色に挑戦したい」。リネンのオレンジのシャツをおすすめ
お手持ちのアイテムを伺いながらの応対も通常のお客様と同じ

プロジェクトの期待値は高く、継続が大事 /スタイルフォース 鈴木 康正さん

デザイン、素材感を丁寧に伝えていく(右:鈴木さん)

今回このプロジェクトに関わることで、視覚に障がいをもつ方が“何に困って、何を必要とするのか”を知ることができ、貴重な経験となりました。

豊洲の「ザ ショップ ティーケー」で応対をした際の皆さんの笑顔が今でも脳裏に焼き付いています。

「どのお店に行っても、こんな接客を受ける事ができれば、何の不安もなく買い物を楽しめる。買い物する回数が何倍にも増える」ということを皆さんが口を揃えて仰っていました。

プロジェクト開始前は「色を伝えるにはどうすれば良いのか?柄やサイズはどう伝えるべきか」と不安ばかりでしたが、ワークショップと店頭での買い物体験で会話をしながらコミュニケーションをしたことで、通常のお客様と変わらないサービスに少しの気遣いと知識、思いやりでこんなにも喜んでいただけるのだと感じました。このプロジェクトの期待値は非常に高い為、ワールドグループとして継続して実施し価値を高められればと思います。

大事なのは“応対の基本 ”に立ち返ること /スタイルフォース 小崎 将明さん

ワークショップを経て豊洲での3日間の買い物体験で応対

20年近い販売経験の中でも、視覚障がいをお持ちの方の応対はなく、どのように伝えどんな工夫がいるか不安を抱きました。

しかし直接接すると「どこで、誰と、何をどのように着用したいか」を伺うことは通常の応対と変わらず、一番大切なのは「お客様の立場に立ち、誠意と熱意を持って応対すること」と基本に立ち返れました。

方向を表現する前後左右、クロックポジションの使用や商品を言葉で伝え互いが想像を一致させていくための表現が必要です。広い店内を回遊すべきか、一か所で応対するかも悩みましたが、通常のお客様と変わらず移動しながらお買い物を楽しみたいニーズもつかめました。

買い物体験で喜んでいただく姿を見て、接客は「お客様に喜んでいただく仕事」であることを再認識し、この経験を多くのスタッフに伝えていきたいと思います。

相互理解し“自分自身とも出合える” /任意団体コオフク 代表 西村 佳子さん

他社とも様々な取組みをしていますが、ワールドのメンバーは本気度と一丸になる力が強いといつも感じます。今回もコロナ禍でしたが、やり切ることができました。

ショウガイシャ(最近私はカタカナ表記を使っています)との共通点から相互理解ができないかな、と思いコオフクプロジェクトをしています。それが「服を着る」ことで、そこからコオフク塾を考えました。コオフク塾では、いつも3つのお願いをしています。

「この時間を楽しもう」

「参加者それぞれの価値観を受け入れよう」

「自分らしく貢献しよう」

そして、自然と誰もが社会の一員として多様性を受け入れる精神的な素地がつくられ、相互理解ができるようになると、ショウガイシャから「対等」という言葉が出なくなるのかなと思います。

ワールドと初めて取り組んだコート展は「わたしとコートと□展」で「□」は“なになに”と読んでいただきました。観覧者が□にコトバを埋め完全なタイトルにすること。不完全を完全にするアクションの中で、自分の中の不完全さへの問いかけになれたらと思いました。「バリアフリーという言葉が不要な社会」、そしてその前に「ショウガイシャの中の健常者」と「健常者の中のショウガイシャ」が理解できる社会になったらいいな、と思います。

ひとりひとりの困りごとをつなぎ、つなげていく「ワールド×コオフク プロジェクト」

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