生活者とクリエイターがつながる、これからのサステナブルファッション

好き

時代を映し、新たな提案を社会に発信し続けるファッションの世界。

あらゆる業界でサステナブルな取り組みがありますが、ファッション業界でも様々な取組みが進んでおり、ワールドグループでは、リユースやシェアリング、オフプライスストア等のサーキュラー事業を推進しています。
これからのファッションは、新しいものをクリエイトする事の大切さと同じくらい、それらを長く愛用したり、必要としている人の手に渡すことも大切です。今後のファッションビジネスを考える上で、リユースとクリエイティブは、どのようにつながり、発展し、生活者に何を求められていくのでしょうか。

今回は、業界をよく知るWWDJAPAN編集長 村上 要さん、kotohayokozawa デザイナーの横澤 琴葉さん、株式会社ティンパンアレイ 代表取締役 平野 大輔さんに鼎談にご参加いただき、「二次流通」をキーワードにそれぞれの視点でお話を伺っていきます。

(左から)WWDJAPAN編集長 村上 要さん、株式会社ティンパンアレイ 代表取締役 平野 大輔さんkotohayokozawa デザイナー 横澤 琴葉さん

二次流通のあらたな可能性を感じたRAGTAG×246st.MARKET

――最初に、今年11月に開催されたリユース×クリエイティブをテーマとしたイベント「RAGTAG×246st.MARKET」についてお伺いします。たくさんの方にお越しいただき、あらためて二次流通市場の盛り上がりを体感しました。

平野 大輔さん(以下、平野)

今回は10名のクリエイターの方にRAGTAGの商品センターに来ていただいて、それぞれの方の感性で50着ずつ選んだアイテムを北青山ビルに集め、さらにRAGTAGセレクトも加えて販売しました。有名ブランドは人気があるので店舗やオンラインでお客様が見つけやすいのですが、その一方で商品数が多いので、商品自体は魅力があるのに眠っているいいものをどうお客様に届けるかは大きな課題でした。今回のイベントでは、クリエイターのみなさんに掘り起こしていただいたアイテムをキュレーションしたことで、様々なお客様に届けることができました。

2022年11月2日からワールド北青山ビルで5日間に亘って開催した246st.MARKET

――横澤さんは商品センターで選んだアイテムとご自身のオリジナルを一緒に並べてラックをつくりましたが、参加してみていかがでしたか?

横澤 琴葉さん(以下、横澤)

もう、めちゃくちゃ楽しかったです! 参加したデザイナーさんとかディレクターさんの中で、おそらく私が一番楽しんでたっていう自信があります(笑)。私にとって、リサイクルショップや二次流通のいろんなプラットフォームで物を買う文化は、物心ついた時からごく自然なこととしてあって。その意識でもの作りしたり、服を買ったりすることを、今回大きな場所で「どん」と見せてたくさんの人に知ってもらうきっかけになったので、本当に楽しかったです。

――商品センターに足を運んでみて、率直なご感想は?

「二次流通の商品を扱う倉庫」と聞いて、最初はどんな感じだろうと思っていたのですが、ほとんどがハンギングされていて、そこにあるものがECで出ている商品とほぼ全て紐付けされているという徹底した管理にすごく驚きました。リサイクルショップで掘り出し物を探す時って、新品の服を見ている時と比べると時間もかかるし、精査するのに結構エネルギーを使うんですが、RAGTAGの商品センターには、それが一切ない。すごく大切に扱われているし、見やすくて。…うん、「もし、自分が服だったら」次の人の手に回る時に、ここで1回お休みしてから次に出るのがいいなって思います(笑)。ひと休みして、ここでいろんなブランドと出会ってから、次の持ち主の元に旅立つというか。あと、スタッフの方たちがいろんなブランドの流行とか価値を体感でわかっている点もすごいですよね。

平野

有難いですね。すごくよく見ていただいて。

村上 要さん(以下、村上)

「誰かが選んだ古着」を発表するっていうのが、すごく今っぽいって思います。情報と一緒だと思うんですが、あまりにも多すぎて選べなくなってきている中で、誰かが「いいよ」って言ってくれるものから探したいという欲求はすごく高まっていると感じます。失敗したくないという考え方が、二次流通の世界でも起こっているっていうのは、単純にすごく面白いと思っていて。RAGTAGが以前からいろんな方とコラボレーションして、その人が選んだものを店舗でポップアップ展開していたのは存じ上げていたので、そういうものがさらに発展していく面白さはありますよね。

あとは、今回「新たな関係性に気づく」という面白さもあったと思います。クリエイターの方々の中で、特にデザイナーのみなさんなのですが、ピックアップしたアイテムの隣にその人のオリジナルの服が並んでると、「このブランドとこのブランド、もの作りのあり方が同じ方向なのかしら?」と想像ができて面白かったですね。正解かどうかは別として、新しい文脈を人それぞれに自由に解釈できて、その文脈から「じゃあ、買ってみようか」となるのは、新しい方法だなと思いました。

横澤

二次流通と新品をミックスさせることは私にとっては自然なことだったのですが、この業界で働くようになってから、それは必ずしも自然なことではないということに気が付きました。

平野

アイテム単品で見るだけでなくキュレーションすることで、二次流通、新品問わずに年代やブランドを越えて新しい価値を発見することができるんですよね。リユース市場も「古いからダメ」ではなく、「古くてもいいものはやはりいい」ということをきちんと伝えていけるようにしていかないと、と感じています。

なぜ、二次流通への注目が高まっているのか?

――環境への意識の高まりなどの社会的背景から注目が集まっていることもあると思いますが、あらためて、背景にはなにがあるのでしょうか。

村上

まずハイブランドの新品は、若い世代にとって高すぎるは大きな理由の1つでしょう。二次流通であれば「頑張れば買える」という予算内にはまってくるので。でも、特に若い世代にとってそれ以上の大きな理由は、「他の誰とも被りたくない」一方で「ものすごく逸脱したくもない」という複雑な気持ちな気がします。「誰かが一度は買ってそれなりに着ているから、この後もずっと着られるかも」みたいな話は若い世代から聞こえてきます。要は、一次流通の売れ残りとは全然違う、ちょっとした特別感もあるようです。アンビバレントな感情の中で、ちょうどいい存在として二次流通が機能しているというのは、Z世代をはじめとした若い子と話している中で面白いと思うポイントです。

平野

僕はこの業界に20年いるので、最近急に盛り上がりすぎて逆にびびってます(笑)。村上さんが仰っていたように、新品は高くて手が出ないけどリユースであれば多少は安く買えるので、二次流通はラグジュアリーブランドの良さを知るエントリーとして、いいことをしていると思っているんです。でも、ブランド側からはなかなかそう思ってもらえませんでした。僕たちとしては、RAGTAGでブランドの良さを知った方が、いつか憧れのブランドを新品で買う架け橋になればと思っていたのですが、風当たりは強かったです。ただ、メルカリなどをはじめとしたCtoCプラットフォームが一般的になってきたことやサステナブル視点から、この数年でだいぶ環境は変わりました。リユースだと、偽物や衛生面の問題がありますが、そういうネガティブなこともリユース業界全体で取組みをして、かなりクリアになってきています。

村上

実は、ファッションメディアでも二次流通を堂々と取り上げるようになったのはここ5年くらいなんです。

横澤

それって、どうしてですか?

村上

今思えば、変に勘ぐっていたんだと思います。「二次流通を取り上げたら、お付き合いのあるラグジュアリーブランドとの関係性に影響するのではないか?」という、勝手な配慮だった気がします。

――逆に、なぜ5年前くらいから取り上げられるようになったのでしょうか。

村上

ただ単純に当たり前になってきたからです。二次流通がファッション業界のもう一つの大きな柱になっているという体感があったからです。洋服のライフサイクルを長くするという業界全体の大きな潮流もあるから、無しでは成り立たないんですよね。

――新しいものをつくって発信するというデザイナーの立場から見た二次流通ってどういう存在ですか?

横澤

二次流通のせいで自分の一次流通が売れなくなるとか、そういうことはないですね。お客さまは、今しか買えないものはプロパーで買ってくださいます。その上で、買い逃してしまったアイテムを二次流通で探して買ったりするんですね。なんだろう、時代を行き来してうまく買い物をできるようになってきたというだけのことだと思うんですね。

それと同時に、私は結構、二次流通で自分の何年前かの商品が今どれぐらいになっているか相場をチェックします。そして、みんながせっかく買ってくれた服の価値が下がるようなことはしないように気を引き締める。私達もブランドのイメージやクオリティを損なわないように努めなきゃいけないし、買ってくれた人たちに還元したいです。その思いは結構前からずっとありますが、このことをこんなふうに話せるようになったのも、確かにこの数年という気がしています。

店舗、オンライン、CtoCプラットフォーム、二次流通の多様なチャネルを生活者はどう使い分けてる?

横澤

それぞれのチャネルで客層がかなり違う印象です。私のイメージですが、自分の持っていたものが次の買い手にわたるまで全部自分で見届けたいという方は、CtoCプラットフォームで売り買いするのが好きな人たちが多い気がします。

村上

うん、CtoCって、本当にそうですよね。距離感がどれだけ近いか遠いかは人によるけど、コミュニケーションツールとして使っている人が多いですよね。

横澤

それって結構面白いですよね。ECでは商品を選んでから購入するまでをどれだけシームレスにするかを充実させていて消費者もそれを望んでいるのに、個人同士の場合には、細かくやり取りしたいっていう方が多い。中には手紙が入っていたり、違うものをおまけで付けてくれる方とかもいて、なんというかほっこり感がある。やり取りするコミュニケーションまで含めて体験として楽しめる、っていうのはありますよね。一方で、RAGTAGのような店舗では、その場で自分の着ている服と合わせて見ることができたり、横並びで他のブランドと見ることができる。二次流通で物に触れてコンディションをみて、試着ができるのはやっぱり本当に大きいと思います。

――RAGTAGでは、オンライン掲載商品を店舗に取り寄せて試着できますよね。

平野

オンラインもお店も、対面か非対面かの違いはあれど、ファッションの楽しさを提供するのは一緒です。店舗に陳列できるのはどうしたって1,000点から5,000点くらいですが、ECには25万点くらいあります。ECで出しているものもやっぱりリアルでみられないと、という想いで店舗取り寄せをやっています

村上

CtoCプラットフォームは相手とコミュニケーションを直接取れる良さがある一方で、もしかしたら偽物かもしれないということもある。信ぴょう性という点でも、真贋を見極めるRAGTAGのような存在は絶対に必要なので、それぞれのチャネルでの役割はあるし、共存しますね。

掘れば掘るほどディープな二次流通の世界。まだまだ、お話は尽きませんので、この鼎談は次回VOL.2に続きます。

デザイナーの横澤さんは自分の服と二次流通市場でばったりと出合った時、何を思うのか? 村上さんが読み解く、今、話題のラグジュアリーブランドのリセールプログラム参入の背景とは? さらに、平野さんが描くRAGTAGの未来予想図とは? 次回もお楽しみに。

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