生活者とクリエイターがつながる、これからのサステナブルファッション vol.2

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ワールドグループでは、リユースやシェアリング、オフプライスストア等のサーキュラー事業を推進しています。今後のファッションビジネスを考える上で、リユースとクリエイティブは、どのようにつながり、発展し、生活者に何が求められていくのでしょうか。

前回のvol.1では、「二次流通」をキーワードに、昨今注目が集まっている背景、そして多様化するチャネルに生活者が求めているものについて、業界をよく知るWWDJAPAN編集長 村上 要さん、kotohayokozawa デザイナーの横澤 琴葉さん、株式会社ティンパンアレイ 代表取締役 平野 大輔さんにそれぞれの視点でお話を伺いました。

■vol.1はこちらから

vol.2では、より深く「二次流通のこれから」を掘り下げていきます。

(左から)WWDJAPAN編集長 村上 要さん、株式会社ティンパンアレイ 代表取締役 平野 大輔さん、kotohayokozawa デザイナー 横澤 琴葉さん

「手放す=捨てる」ではない、Z世代の価値観

――お話を伺う中で、リユースをはじめとする二次流通に対して、ファッション業界だけでなく生活者の意識が大きく変わってきたように感じます。

平野 大輔さん(以下、平野)

実際にRAGTAGの店舗で買い取りを利用する方を見ていると、それはすごく感じます。以前だったら‟売る”ことは‟捨てる”または換金の手段でしたが、今は、‟次の人に渡す”という意識に変化してきています。また、売ることを前提に買う方も増えてるので、良い状態で次に渡すことも意識していますね。特に若い方に多い傾向です。

――いわゆる、Z世代の方々でしょうか。

そうですね。人によるかと思いますが、Z世代はハイブランドやクリエイターブランドを結構買うんですよね。情報収集に長けているので知識があるし、「いいものはいい」という見極め力が半端ない。うちの新卒も、めちゃくちゃおしゃれです。

村上 要さん(以下、村上)

Z世代は、自分らしさがしっかりとある上で、「社会とつながる自分でありたい」という思いが強いと感じます。うちの若手メンバーと話していると、消費は社会とつながる行為と捉えています。彼らにとって‟買う”という行為は、‟信任投票”で、意志表明の手段の一つ。逆に、‟捨てる”という行為は、社会との‟分断”を意味するのだと思います。だからできる限りやりたくない。自分の手から離す際にも、次にパスするほうが社会とつながっていると実感できるのだろうなと思います。

――社会の輪の中に参加していたい、という意識が強い

自分たちが輪を描けてるかどうかが重要なわけではありませんが、彼らなりに社会の中で様々な人とつながる手段を求める中で、‟共有”に向かっているのではないでしょうか。

横澤 琴葉さん(以下、横澤)

本当に同感です。今や、何も考えずに服を処分している人は少ないと思います。考えてみれば、服よりも価格帯の大きいもの、例えば家具や自転車、車、それに家などは元からそうだったわけですよね。売る際に対価として自分に返ってくるので、どんなコンディションなのかという意識は当然のこととしてあるはずです。皆さんの話を聞きながら、Z世代の方々はそのことが肌感でわかってるのかな、と感じました。服だけでなくその他も含めて、自分が消費したものがその後どうなっていくのか。どこにどのように届いてるかをちゃんと把握したいという意識があるのだろうな、と思います。

自分がつくった服に、二次流通市場でふいに出合ったら

――横澤さんは、自分がつくったもののその後が気になる、とおっしゃっていました。二次流通市場でかつて自分がつくった服と出合うとどんな気持ちになるのでしょうか。

横澤

「おぅ、久しぶり」って感じですね(笑)。買ってくださった方が捨てずに次の人に託してくれるのは嬉しいです。もちろん、次に回せないぐらい着倒してもらえたらめっちゃ光栄なことですし、もう着ないけれど大切に取っておいてもらえることも嬉しいです。どうであれ、私の手から離れて想像の範疇を超えていくことにワクワクしますね。そういう意味でリユースの店でまた出合うのは、想像力も働いて面白いと感じます。

――これまで実際にそういったことはありましたか?

それこそ今回の246st.MARKETに、私のブランドのものがあって。自分で一つずつ縫っていた頃のもので、価格も当時と同じくらいだったのですが、どなたかが買ってくださっていました。自分でも久しぶりに手に取って、つくり方も今とだいぶ違っていたりして、懐かしい気持ちにもなりました。

246st.MARKETで接客をするお客様と談笑する横澤さん

――まさに久しぶりの再会、ですね。

以前、高校生で着ている子がいて、その子はメルカリで買ったとのことでしたが、「いいじゃん」って言ったら、「いつか、絶対お店で買うって決めてます」と言ってくれて。その後、本当に初任給で買ってくれたんだそうです。すごくうれしかった。そういうことがあるんですよ、やっぱり。いつか、のためのトライアルだと思うんですよね。そのうちに、「よっしゃ、これだ!」という時に、お店で接客を受けて、ちゃんと買う。それもまた価値だし、大切な体験だと思います。

――平野さんがおっしゃっていた「RAGTAGでいろいろなブランドやアイテムにチャレンジしてほしい」という話につながりますね。

平野

今のお話はまさにそうですね。最初は二次流通でブランドの良さを知って、働いてお金ができたら満を持してそのブランドの店舗で購入するという。うちは長いお付き合いのお客様も多くて、プロパーで買った商品を身に着けて来店された際の対話から「もし、着なくなくなったら売りに来ますね」「ありがとうございます」というやりとりがあります。その方が大切に着たアイテムが次の人の手に渡り、みんながおしゃれになっていく。そんな循環は嬉しいですね。お客様と一緒にファッションも成長していく、という感覚です。

ラグジュアリーブランドがリセールプログラムに乗り出す背景とは

――昨今、ラグジュアリーブランドがリセールプログラムをはじめたり、カジュアルブランドが顧客間で売り買いができるプラットフォームを作ったりと、自社製品の二次流通に乗り出す動きが出てきています。これには、どんな狙いがあるのでしょうか。

村上

まず、ラグジュアリーブランドのリセールプログラムですが、自分たちでコントロールすることでブランドイメージを毀損しないという目的意識が強いと思います。マーケットで言うと、高級時計が最も早かったです。時計は精密機器ですが、二次流通におけるメンテナンスの過程でムーブメントを変えられたり、ブランドが認めていない部品が組み込まれたりすることがあります。お客様がそのことに気が付かずにブランドにメンテナンスに出すと「中身が全然違うので、うちでは対応できない」ということが起こってしまう。もちろんブランドは悪くありませんが、お客様には残念な体験をしたという記憶が残ってしまうわけです。そういうことが起きないように、二次流通においても自分たちでコントロールした上で再び世に送り出した方が残念な体験をするお客さんが減るし、その結果、ブランドのイメージ向上、少なくとも維持にはつながるという考え方で始めているところが多い、という印象です。

――では、カジュアルブランドのプラットフォームをつくるというのは?

末永くお付き合いしたり、お付き合いの回数そのものを増やすという目的が強いと思います。「売りたくなったら、私達のところにもう1回来てください。そうすれば、適正な買い取りはもちろん、買い物で使えるクーポンも発行しますよ」という感じでお客様との関係を最長化するために自社アイテムの買い取りプログラムを組み込むことが増えてきているのだろうと思います。

――確かに、安心感がありますし、エンゲージメントも深まるように感じます。

一度でも買ったり、着たことのあるブランドへの興味・関心がその後も長く続くということは、以前から肌感覚としてあります。過去に購入したことがあるブランドのコレクションは何となくチェックする、という感覚。例えば、WWDJAPANで、メゾン マルジェラのコレクション一覧が異常なまでのPVをたたき出すのは、まさにそのことの表れだと思います。ブランドが興味関心の対象であり続けるための接点やアプローチを増やしていくことは、これまで以上に大切になってきているように感じます。

――ご自身でブランドをやっている立場から、横澤さんはどう感じますか?

横澤

自身のブランドのリセールプログラムは、私もやってみたいですね。プラットフォームを作って継続するのは大変だと思うんですが。そのアイテムがどういうコンセプトとプロセスでできたのかはつくっている側が一番わかってるので、その文脈に沿った付加価値と共に次に渡す取組みには興味があります。ブランドとリセールアイテムが紐づいていて、アイテムに対してコメントが付いていたりするものいいですよね。

村上

ブロックチェーンをはじめとしたテクノロジーが発達した今なら、それも実現できそうですよね。これまでの所有者や作った本人がアイテムについてのコメントを付けていく仕組み、これからの技術があればきっとできると思います。

平野

それ、できたらいいですよね! うん、RAGTAGでもやるための仕組化を考えたい。

これからの二次流通に求められるのは?

平野

二次流通における今後の大きな課題は、偽物の技術が上がっていることへの対応ですね。真贋のレベルをより一層上げながら、お客様が安心して買えるような二次流通の仕組みをつくる必要があります。安心して買っていただくために、今後私たちのやり方や取り組みを公開する必要もあるかもしれません。あとは、まだまだ眠っている価値あるものの魅力をどう伝え、次の手に渡していくかというのはますます大事になってきます。今回の246st.MARKETのように、コラボレーションをすることで楽しさを掘り起こしたり、リアル、オンラインの垣根なく様々な機会を増やして、ひとりでも多くのお客様にファッションを楽しんでもらいたいと思っています。

横澤

今、平野さんがおっしゃったように、二次流通のプラットフォームや仕組みに対して、私達つくり手も、よりオープンになっていくことが大事だと思います。つくり手の思いや、売り手の思いを伝えることで、直接ブランドで買う時とはまた違う、二次流通ならではの価値と出合いが生まれると思います。自分の次の、さらにその次を考えていくということが、もっと当たり前になるといいですよね。

――二次流通があることで、新たな価値が加わって、服の命はさらに長くなるのですね。

村上

消費者が一方的に受け入れる時代ってとっくに終わっていますよね。二次流通は、一方通行だった矢印を真逆に出せる構造だと思います。先ほどのブロックチェーンの話もそうですが、コンディションだけでなく、誰かの思いも含めて違う方面に矢印が出していける環境が伴うと、ものの価値はより上がっていくと思います。究極、1着1着にインスタグラムのようなアカウントがある世の中が広がったりすると、いろいろなことが芽生えて面白いと思います。そういう生態系プラットフォームみたいなものが作れたら面白いなぁ。

――この鼎談の中で、横澤さんから「服が人だったら」という名言をいただきましたが、まさにそんな感じですね。

横澤

服にインスタがあるって、すごく面白い! 「私の持ち主、今日からこの人になりました」とか、「今の持ち主、私のことこういう着方するんだけど、意外と悪くない」とか(笑)。コーディネートを共有したり、アドバイスをもらったり。そんなことができたらいいですよね。今日は皆さんとワクワクする未来をたくさん語れて、楽しかったです。ありがとうございました。

村上・平野

服のインスタ、実現したいですね(笑)。今日はありがとうございました!

今回の鼎談から見えてきた二次流通の未来は、新たな可能性に満ちていました。ていねいに作った服が大切に着られて、次の人の手に渡っていく。その過程で、その服には新品以上の価値が生まれていくのかもしれません。糸から布になり、様々な人の手を経てつくられたその瞬間から、服はただの「もの」ではなく、個性をもった生き物なのかもしれません。二次流通の旅をしながら成長し、時には形を変えながらその役目を果たしていく。みなさんの鼎談を聞きながら、ファッションと共にある日々を様々なチャネルを通して生活者に伝え、届けていくのがワールドグループの使命であると、改めて思いを強くしました。

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