HIROKO HAYASHI (前編) 素材を活かす発想力とブランドの哲学

好き

社内での癒しアイテムであるカラスとカバとともに 左から)羽鳥 郁未さん、佐野 太郎さん、堀内 啓子さん

大人の品格と遊び心を兼ね備えたバッグや革小物を提案する「HIROKO HAYASHI」。2003年にワールドにてブランドをスタートしてから長い間、“財布は美しい手の動きを促すもの、バッグは夢と思い出を詰めるもの”という思いをコンセプトに、多くのファンを魅了してきました。そんな「HIROKO HAYASHI」を唯一無二のブランドたるものとしていることとは。前編である今回は、モノづくりの現場で働く(上記写真左から)開発MDの羽鳥 郁未さん、デザイナーの佐野 太郎さん、生産管理の堀内 啓子さんの3名にその強みをうかがってきました。

「HIROKO HAYASHI」を読み解く3つのキーワード

① 素材を生かしきるデザイン力の源泉は「紙の模型」と「素材から受けるインスピレーション」

② デザインを支えるHIROKO HAYASHIの哲学「トレンドを入口にしない」

③ アパレル並みに展開する「常に50〜60の素材」と「原料調達のコントロール」

①素材を生かしきるデザイン力の源泉 

~「紙の模型」と「素材から受けるインスピレーション」~

――早速ですが自身が思うブランドの魅力について教えてください。

羽鳥 郁未さん(以下、羽鳥)

開発MDという立場からですが、「HIROKO HAYASHI」はデザイン過程のこだわりが魅力的な商品につながっているのだと思います。例えばバッグをデザインする際、まずデザイナーの(佐野)太郎さんが紙で模型を製作して、そこから実際のバッグの形にするにはどうすればいいかを考えている。模型を実際に動かしてみて、美しいかどうか、考えて考えて考える。そういった試行錯誤を通したデザインの過程が形となって、魅力として伝わっているのではないでしょうか。

佐野さんが作成した紙の模型。実際に動かしてみることでバッグとしての美しさを確認する

堀内 啓子さん(以下、堀内)

「どうやって形にするんだろう」と感じたデザインやアイデアもありますが、デザインチームが作成した模型をみるとより理解しやすいです。生産管理という立場から、デザインの美しさを損ねずにいかに長く使用できる商品にできるか、(製作する)職人さんと相談しながら形づくりをしています。例えば、強度を持たせる場合も内側の見えない部分で補強を行うという工夫をして、美しさのディテールにはとことんこだわっています。こういった表にみえない部分の積み重ねは、目立つことはないですが、ブランドの魅力を作る一つの要素だと思っています。

――商品の美しさを突き詰めること、デザインするうえではいかがでしょうか?

佐野 太郎さん(以下、佐野)

林ヒロ子さんは去年売れたから今年もまたやるという発想ではなく、毎シーズン”ゼロ”からスタートさせる方。モノから入らず、自分の興味や好きなもの、そのとき感じたことをイメージや言葉など、ふわっとしたところから落とし込んで、デザインに積み上げていきます。革に限らず、素材からデザインもしますね。この素材を使いたいからこういう形にしたいという感じです。

羽鳥

突拍子もないようなおもしろい素材を見ると、我々もテンションがあがってしまいますよね。

佐野

例えば、工事現場のフェンスからもヒントを得ています。実際にフェンスを買ってきて、その素材からバッグを作ったこともあるんです。今ではそれを活かして、プリントにしたり、ジャカードにしたり。もっと使いやすいように作り変えていますが。あと、ジラソーレも、展示会へ行った時にみた革が金網に見えて。それで金網なのか、鉄なのかというところから発想を得ています。売れそうだからいいじゃなくって、鉄みたいなのがおもしろくていいねって。

2009年SSに発表された、工事現場のフェンスから着想を得た「ディアナ」

羽鳥

他にも2年ぐらい前に、ごみ置き場にかけてあったカラス除けのネットを使いたいって、太郎さんがホームセンターで買ってきたこともありました。実際はデザインには使わなかったようです。15年続く夏の定番シリーズであるファーブルも、メッシュはメッシュなのですが、通常のバッグで使う素材ではなくて、あえて工業用のフィルターとかに使うポリエステル素材を使用しています。そういうバッグ用ではない素材をつかっているのも特徴的ですよね。

工業用の素材を使用した、夏の定番シリーズ「ファーブル」。イタリアから15年変わらずに仕入れている麻のテープも特徴的

堀内

素材でいうと、バッグに使用する麻のテープは、15年前から変わらずイタリアの小さいテープ屋さんから買っています。似たようなものには変えずに。

羽鳥

似たようなものはあります。ただ、それに変えてしまうと雰囲気がガラリと変わってしまう。そういう細かいところにこだわる。そのこだわりの積み重ねが魅力的な商品の仕上がりにつながるのだと思います。

②デザインを支える「HIROKO HAYASHI」の哲学

~トレンドを入口にしない~

――素材の力が魅力的な商品に繋がるのですね。お客様もその素材に魅力を感じて購入されているのでしょうか。

羽鳥

商品のなかには、他のブランドでは扱われないような素材を使うものもあって、20年以上使い続けている素材も結構あります。その素材が好きで買ってくださっているリピーターの方がたくさんいて。ずっと同じものを買い続けて下さるお客様が多く、中には「もう五代目なんです」という方もいらっしゃいます。愛用頂いている顧客様がブランドの売り上げの軸になっていく。さらに、店舗のスタッフの皆さんの圧倒的な知識とブランドへの愛で、商品の良さをより魅力的に伝えてくれていることも大きいですね。

――他にもお客様に支持される魅力は何だと感じていますか?

堀内

人と違ったものを持ちたいという思いを叶える珍しさや希少性といった点でしょうか。バッグやお財布は他のブランドでも多く扱われる定番ですが、お客様は、「HIROKO HAYASHI」に来たら何か他にはない新しい発見があると期待してくださっているのかなと思います。

羽鳥

個性的だけど洗練されている…というのでしょうか。最近だと海外のリピーターの方もお店にお越し頂き、日本へ旅行するたびに立ち寄ってくれます。アイテムをみて「HIROKO HAYASHIにしかない」と言って下さります。

渋谷スクランブルスクエア店。店内はスッキリと洗練された空間を演出

佐野

デザイン的に、モノ作りの入り方が違うこともお客様に伝わっているのかな。今これが流行っているから作ろう、とかそういう発想ではない。そういったモノをつくる過程が、良くも悪くも他のブランドとは違って見えます。僕もデザインするにあたって、ヒロ子さんが持ってかっこいいとか、気に入ってもらえるとか、喜んでもらえるといったことが原点なんですよね。そういったヒロ子さんの哲学を社内の皆が見ているのでブランドがぶれない。そこがお客様にも伝わっているんでしょうね。

羽鳥

そうですね。迷ったときはヒロ子さんに聞いてみようとか、ヒロ子さんがどう考えるのかなということは常に意識しています。

③アパレル並みの素材展開

~「常に50〜60の素材」と「原料調達のコントロール」~

――バッグブランドのなかでも、シーズンに出す新素材や新型のバリエーションが多いとお伺いしました。

堀内

「HIROKO HAYASHI」に入って一番最初にびっくりしたのが、お財布のベルトの裏に“だけ”使う革をオリジナルで作っていることでした。そのため、常に5,60種類の素材を管理しています。素材も効率やコストを重視して作られていくことが多いと思いますが、ひとつひとつのモノに対するこだわり方が違うと感じました。それが素材数の多さに繋がっているのだと思います。

羽鳥

先ほども話が出ましたが、素材からモノを考えるという順番なので、必然的に新型も多くなります。

堀内

素材はイタリアと日本で調達しています。二次加工を施す素材も多く、ひとつの商品に複数の素材を組み合わせることもあり、クオリティを安定させることが難しい時もありますね。これら原料調達のコントロールは、ひとつひとつの商品にあった必要なもの、大切さがわかっているのでやりがいはあります。また、途中でトラブルが起きても、お店に並ぶときには何もない状態にする。いつも通り、ということを大切に取り組んでいます。

堀内さんが驚かれたという財布に使用するベルトの裏地

――そういった「いつも通り、変わらず長く続けていく」ということもお客様に支持される魅力なのですね。では、今後どのようなブランドにしていきたいですか?

佐野

「HIROKO HAYASHI」というブランドをもっと知ってもらいたい。意外と知られているようで、まだ知られていない。

羽鳥

国内外問わず、いろいろな方に使ってもらえるような、広く愛されるブランドになりたいです。親子で使われるお客様が結構いらっしゃるのですが、さらにお孫様へといった、代々受け継いで、長く楽しんでもらえるブランドにしていきたいと思います。

プロフィール

羽鳥郁未さん

2005年ワールドへ入社し、2008年からHIROKO HAYASHIに携わる。一度ワールドから離れるものの、再度2019年にワールドへ。現在はHIROKO HAYASHIの開発MDを担当する。

佐野太郎さん

デザイナーとして、1990年にイタリア・ミラノに渡り、1998年からミラノの林ヒロ子さんのデザインオフィスに入る。2012年に日本へ戻った際、ワールドへ入社。現在、HIROKO HAYASHIの多くの商品のデザインを担当。

堀内啓子さん

前職でもバッグの制作に携わる。ワールドへ入社後、2016年からHIROKO HAYASHIを担当。現在はオリジナル素材等含む各商品の生産管理を行っている。

「HIROKO HAYASHI」について

【 Brand Concept 】

大人の品格と遊び心を兼ね備えたバッグや革小物を提案するブランド。

財布は美しい手の動きを促すもの、バッグは夢と思い出を詰めるものという思いが込められています。

【 商品のお取り扱い 】

■ ヒロコ ハヤシ:オンラインストア http://hirokohayashi.jp/

■ ヒロコ ハヤシ:全国店舗 https://store.world.co.jp/real-store-search?pcf=1&br=BR709&link_id=709_H_shoplist

【 Social Media 】

■ Instagram @hiroko_hayashi_official

■ Twitter @OfficialHiroko

■ LINE https://lin.ee/cgdMUAY

取材を終えて…

長く続けることの美学とゼロから発想。この両極端ともいえる思考・発想の絶妙なバランスが「HIROKO HAYASHI」の魅力なのだと感じました。さらに実際に社内で働く方々のブランドへの愛、ひいては林ヒロ子さんというカリスマへの絶大なる信頼感こそが、「HIROKO HAYASHI」を唯一無二のブランドたるものにしているのではないでしょうか。次回は「HIROKO HAYASHI」の“売る”現場をお届けします。

OUR TEAMのアーカイブ記事はコチラから

2023年2月の新着記事はコチラから   

Comments

  1. クドウノブユキ より:

    久しぶりにのみ込まれるように読みました。
    凄く面白かった。

コメントはこちらまで

新着記事

  • あの日の記憶を次世代に伝える  ー 阪神・淡路大震災 30年

  • 2月22日(土)開催!よみうりランド招待イベント 「ワールド スペシャルデー!」 ★参加申込 受付中★ 

  • 「WORLD GALLERY」写真募集スタート -ワールドグループの皆さんの活動を、写真でシェアしてください!

  • 全国美味いもん探しの旅 🎍 お正月編 🎍

  • 表彰店舗・ドレッサー紹介 🏆 今月は「リフレクト」京阪百貨店守口店、「リサマリ」 アトレ亀戸店 蜂谷 ゆりなさんにインタビュー!