新期直前企画! Z世代との‟やらかさないための”コミュニケーション術 前編
春の足音が聞こえてくる3月。来月から新たな期がスタートし、ワールドグループにもフレッシュな新入社員が仲間入りします。
そこで今月の特集では、来月より新入社員を迎えるにあたり、2000年代に生まれたZ世代(※)社員のみなさんと互いに気持ち良くコミュニケーションを取るためにはどうしたらよいかを考えるべく、緊急鼎談「Z世代との‟やらかさないための”コミュニケーション術」を企画しました。
※Z世代 「Z世代」とは、1990年代半ば~2000年代半ばに生まれて、2010~2020年頃に成人した、デジタルネイティブ世代・SNSネイティブ世代、の意味で用いられる言葉である。(『実用日本語表現辞典』より)
ご参加いただくのは、ファッション業界の求人プラットフォーム「READY TO FASHION」で代表を務め、学生とのコミュニティを運営している高野 聡司さん、株式会社サイバーエージェントで新卒採用を担当し、ご自身もZ世代の宮内 大輔さん、そしてワールドグループで新卒採用チームのリーダーを務める前川 亜紀子さんです。
日頃、様々な場面でZ世代と接している採用のプロフェッショナルたちによる座談会から見えてきたものとは?
まず、前編ではZ世代の価値観について。何を大切にしているのか、そして上の世代に対して感じている違和感とは? まずは違いを知るところから紐解いていきます。

左から)宮内大輔さん、高野聡司さん、前川 亜紀子さん
高野 聡司 /株式会社 READY TO FASHION 代表取締役 (写真中央)
広島県広島市出身。1993年生まれ(さとり世代)。学生時代にファッションメディアのマネジメントや取材/ 営業を経験。その繋がりからファッションをテーマに活動する学生団体の集合体「fashion community1.0」を立ち上げる。その後、ファッションEC を扱うルビーグループに入社。新規事業部にてファッションメディア「The FLAG」の立ち上げに関わる。2016 年11 月に株式会社READY TO FASHION を立ち上げる。趣味はネコと遊ぶこと。
宮内 大輔 /株式会社サイバーエージェント AICG部門 HRBP (写真左)
静岡県駿東郡出身。1996年生まれ(Z世代)。2019年に株式会社ラフール(ヘルスケアSaaSベンチャー)に新卒1期生として入社。SaaSプロダクトローンチ初期の新規開拓営業を経験した後、人事に異動。拡大する組織の中で、幅広い職種の採用を経験。2022年9月に株式会社サイバーエージェントに転職し、CyberHuman Productionsの新卒採用の立ち上げに挑戦中。趣味は動画制作。
前川 亜紀子 /株式会社ワールド 新卒採用リーダー (写真右)
兵庫県宝塚市出身。1983年生まれ(はざま世代)。大学卒業後、株式会社ワールドに入社。SPARCS推進、ピンクラテのエリアMD、メディテラスの店舗MD、OPAQUE OSAKAの館長など、入社10年間は店舗運営に従事。その後グループの様々なキャリアを経て2020年より現職に。趣味はお酒を呑むこと。
タイパ重視。‟最短距離で答えに到達”が身上
――本日はみなさんとZ世代とのコミュニケーションを考えてみたいと思います。早速ですが、前川さん、20代前半の方とコミュニケーションを取る中でギャップを感じたことはありますか?
前川 亜紀子さん(以下、前川)
そうですね。最初の頃にネガティブに感じていたギャップでいうと「すぐに答えを求める」ということ。何か取り組む時に、具体的にどうやればいいのか、それをやる意味は何か、やり方のマニュアル的なものも含めて、考える前にとにかく答えを求めるな、と。今はネガティブに感じていないのですが、以前は特にギャップを感じていた部分でした。
――どうしてすぐに答えを求めるのか、Z世代の社員に聞いてみたんですよね?
前川
はい。「最速・最短で到達する方法を知りたいので、考える前に行動するのは苦手。最短ルートを知るためにすぐに検索をする」という答えが返ってきました。さらに「どうしたら失敗するか、その失敗がどんなことにつながるかまで聞いておきたい」とのことでした。また「調べる時にはノウハウ系YouTubeを倍速でみたりと、いかに簡単に早く情報を得るかの癖がついている」とのことです。
宮内 大輔(以下、宮内)
失敗の先まで知りたいとまで言わなくても、効率化・最短化を求める部分は自分にもあるし、それが自然になっているのかもしれないですね。物心ついた頃から身近に調べられるデジタルツールがあったので。
高野 大輔(以下、高野)
最短ルートを知りたいのは効率のことだけではなくて、時間をかけたのに失敗するのが怖いっていうところもあるのではないでしょうか。自分で考えたことを違うと言われたり、叱られたり。否定されることに慣れていない中で、そういうことが積み重なって、マニュアル的な「無駄なく失敗しないための答えが欲しい」のかもしれない。

前川
失敗して叱られて、そこから自分で答えを求めるみたいな感じじゃないんですね。個人差はあると思いますが、そもそも叱られる機会がそう多くない気も…。
宮内
叱られたのは、親や小学校の先生くらいでしょうか。それ以外はあまり記憶にありませんね。学生時代も互いに褒め合う文化でした。上から叱られたり、言う通りにしないといけないという上下関係はなかった。「みんなで仲良く」という環境でした。
高野
なるほど。だとすると、みんなで仲良くという環境の中で「ダサいから、みんなの前で失敗したくない」というのも大きいのかもしれない。
前川
確かに失敗は恥ずかしいですよね。でも、若手メンバーには「リーダーになって仕事を任されると自分で判断して仕事を進めていくことが増えるので、その時に最速・最良の判断をするために、自分で考えて失敗もしながら培っていく経験値が必要なんだよ」と話すと納得度が高かったです。Z世代は「答えをもとめる」「失敗を恐れる」とこちらから決めつけるのではなく、その先の目的を伝えることがポイントだと気付かせてもらいました。また、若手メンバーに昔の失敗談を話すと「前川さんにもそんなことがあったんですか! ちょっと自信がつきました」ってほっとした顔をされるので、たまに失敗談を披露します(笑)。

高野
最初から完璧にできるとは思ってないんですけどね。失敗してもいいんだよっていう雰囲気を上司やマネジメントする側がつくることが大切なんですよね。
――あえて聞きますが、「失敗」って必要だと思いますか?
宮内
必要、ですね。でも失敗したくないという同世代はめちゃめちゃ多いと思います。自分で考えて失敗するくらいならマニュアル通りにやって失敗しないようにしたいっていう。でも、それってやりたいことやなりたい姿が明確ではないからだと思うんです。自分はやりたいことが見つかったタイプだったんですよね。やりたいことが軸にあるのでそれに向かってなら失敗してもいいと考えています。でも、やりたいことがあまり明確でない人にとっては、仕事はお金稼ぎの手段でしかない場合もある。それならば会社ではできるだけ目立たずに過ごしたいというのはあるんじゃないかなと思います。

前川
失敗は目立つし、無駄ということ?
高野
失敗から得られることをメリットだと思えない、ということかな。
宮内
正直、同世代には失敗は無駄だという人は結構多いと思います。高野さんはどう思いますか?
高野
必要だと思う。最終的に失敗したほうが身について成長するので。そういう意味で上司がいかに失敗させてあげられるかというのは大きいですよね。甘やかすのとは違います。失敗されるとフォローも大変だし。でも、Z世代の子には社会人になっても失敗してもいいんだと思って仕事をしてほしいなって。
前川
うん、失敗って、方法がまずくて目的を達成できなかったという経験なので、経験として積んだ方がいいと思います。会社に入ってから救われた言葉が二つあるんです。一つは2年目の時で、簡単な仕事のミスで幸い大きなトラブルにはならなかったのですが、当時のブランド長にあやまりに行ったら「全然気にしなくて大丈夫。一生懸命やっているのはわかってる。足りないのは経験だけだから」って言われたんです。その言葉にすごく救われましたし、次はうまくやれるように、喜んでもらえるようにって思いました。二つ目は、5・6年目ぐらいの時です。課題店舗の改善で異動したんですが、なかなか結果もだせず、メンバーとの信頼関係構築にも苦戦してへにょへにょしていたら「アウェイを楽しめ」と、尊敬する上司にひとこと言われました。そうか、この状況さえ楽しんでしまうことがこの人みたいになる方法なんだって思って吹っ切れたんです。
宮内
失敗は嫌ですけど、絶対失敗したくないというわけでもない気がするんですよね。誰しも成長はしたいと思っているし。ただ、失敗した後のまわりの目とや雰囲気がこわいんです。なので、社内コミュニケーションの中で失敗を認めてあげるというか、許容してあげる空気を作ることのほうが大切なのかも。もはや「失敗」という言葉を使わないほうがよいかもしれないですよね。よりポジティブな言葉に変えていったほうが良い。
高野
「経験」とか。もしくは「いい失敗だね」とか(笑)。
宮内
サイバーエージェントでは、役員など上の役職の方が自ら進んで失敗エピソードを積極的に言います。それがいいのかもしれないですね。
――MOVINGでやりますか、失敗コーナー。
前川
それ、リレー形式にしたほうがいいんじゃないんですか? 「この人は失敗をしていそうなので聞いてみたい」とか、逆に「この人でも失敗するの?」という人にバトンを渡していく(笑)。
宮内
それは学生にも受けそうですね、新卒採用のコンテンツとしてもいいかも。心が軽くなるし、面白い。
前川
うん、失敗させてくれる上司の存在って、大切ですね。
――ここで、データを見てみたいと思います。
「上司の対応で好感が持てたこと」(複数回答)の上位結果
■話を聞いてくれる・相談しやすい(73.3%)
■指示やアドバイスが的確(66.8%)
■認めてくれる・褒めてくれる(65.3%)
■人によって態度を変えない(60.4%)
■感情的にならない(52.0%)
■意見を否定しない(51.5%)
■フラットに接してくれる(43.6%)
■仕事以外の何気ない話も聞いてくれる(41.3%)
※マイナビ転職「転職先に求める環境と仕事の価値観調査」(2021年10月)より
――みなさん、こちらをご覧になってどう感じますか?
前川
うん、これまで話してきたこととつながりますね。「指示やアドバイスが的確」というのは、ある意味彼らが重視する効率化やタイパにかなっているのではないかと思います。
宮内
そうですね。何の違和感もありません。こういう上司がやっぱり好きですね。
仕事一筋ではない。コミュニティの中で個を活かしつつワークライフバランスを大切にしたい
――Z世代と接する際に感じるギャップに関するヒアリングの中で「個人商店」というワードが出てきました。その仕事をやることに個人としてメリットはあるのかということを重視するというスタンス。さらに会社への帰属意識が弱いと感じるとのことなのですが、こちらについてはどう感じますか?
高野
ファッション業界で働きたいと考える学生達の就活をみていると、近年ひとつの会社にずっと居続けるっていう感覚はかなり希薄になってきていますね。いい悪いということではなく。なので「個人商店」という言葉はしっくりきます。
前川
ワールドの新卒採用でも「ファーストキャリア」という言葉を使います。社会人としての最初の1歩を私たちと一緒に、というスタンス。
宮内
自分が入った4年前は、わりと少数派でした。安定を求めて大きな会社でずっと働ける会社に行きたい人が多かったと思います。ただ実際に働いてみてストレスがかかると辞めてしまったり、メンタルバランスを崩してしまう人は同年代に少なからずいました。その頃と比べると今はやりたいことがある人が増えてきていると感じます。ただし、やれる場所はプライベートで属しているコミュニティやSNS、YouTubeだったりと多様になってきているので、会社じゃなくて、そこでやっても良さそうって人は多いと思いますね。

高野
だからこそ、ワークライフバランスというか仕事以外の自分の時間を重視するんですよね。
前川
面接をしていても福利厚生の詳細を細かく聞いてくる学生さんも多いし、休日や自分の時間はちゃんととれるのか、残業がどうかと心配する方が多いと感じます。ある意味ワールドはそこがちゃんとしている会社なので、学生にとっては安心材料になっているんだと感じました。
宮内
コミュニティには価値観が一緒の人が集まるので、居心地がよいというのはあります。会社は色んな世代や価値観の人がいるので、コミュニケーションが大変だなと思ってるのはZ世代あるあるかもしれません。その中で上下関係を重んじてきたのが上の世代だとすると、Z世代は明確な上下関係を築く意識や経験が浅いのかもしれませんね。自分が所属していた部活でも先輩後輩の関係はフラットでした。IT業界は縦のラインのコミュニケーションが他の業界よりも強くないと思いますが、かつては今よりもあったのだと思います。ただ、どんどん新しいものが出てくるのでいくら経験があっても、若手も先輩も横一線のフラットな立場で話さないと、物事が進んでいかないっていうのがあると思います。
――業界にもよるのですね。高野さんは学生と企業の間に入る立場ですが、昨今感じることはありますか?
高野
企業と就職者の立場でいうと、昔は企業側が「採用してあげる」という立場だったところから、今は「働いていただく」まではいかないですけど、関係性がフラットになってきたというのは大きな変化です。だから、未だに上から目線の企業は全然採用はうまくいかないんですよね。

宮内
今は学生側にある程度のスキルがあったり経験や考えがしっかりしていれば、彼らが選べる立場にいるので。逆に企業が採用してあげるスタンスだと、ちょっと難しいですよね。
前川
そこは時代もありますね。ワールドの採用は6ステップあってアパレルの中では多い方です。お互いに大変なのですが、私たちは応募者の個性を色々な角度から見たいということを伝えるし、採用プロセスで様々な面接官がでてくるので、みなさんも面接官を通して自身とワールドのフィット感を見極める機会にしてくださいねっていうのを絶対伝えています。最終的に内定が出た時に「この会社でいいのかな」と不安にならないように。

高野
その考え方は寄り添っていますね。先ほどの、企業側が採用してあげるというスタンスの企業は入社後もその上下のコミュニケーションがスライドしているんだと思います。
宮内
確かに、新卒の採用活動にはその企業の将来を担う彼らの育成と彼らとのコミュニケーションの考え方やスタンスが表れていると思います。
――後編へ
Z世代のみなさんが過ごしてきた学生時代は就職活動も人間関係も基本的にはフラット。同じ価値観を持ったコミュニティに属し、個を重んじ、やりたいことを実行するのは必ずしも会社でなくていいと考える人も多いことがわかりました。多様な価値観を持つ彼らとのコミュニケーションにおいて、旧態依然とした上意下達のスタンスは通用しません。では、先輩社員の我々は具体的にどうしたらいいのでしょうか…。後編ではコミュニケーションの在り方やあるべきスタンスについてさらに話を進めます。
次回の更新は3月15日です。お楽しみに。






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