”卸”のDNAを継承した、新世代の営業
ワールドアンバー 前編
来シーズンの商品で彩られた展示会に、地方から多くの専門店様が足を運んでくださる。そして営業との会話とともに、受注がつけられていく。創業から培われたノウハウをベースに、時代の変化に対応してきた提案力こそがワールドの卸事業の強みです。今回はワールドアンバーの中でも超若手、20代の3人にインタビュー。翌週から秋冬の展示会が始まる浜松町 シーバンスにお伺いしました。


――MOVING編集:それぞれ、アンバーに入るまでの経歴を教えて下さい。
大日方:WP2入社で、アンバーに来てもうすぐ1年半。3人の中でアンバー歴は一番先輩ですが、3人ともほぼ同じタイミングですよね。
――20代が一気に入ってきた感じですね。
――まず、桑原さんのお仕事の内容は?
桑原:営業の括りですが、いわゆるブティック営業以外の新規販路として「美と健康」の商品を専門店以外の小売店や職域販売まで行います。本当にオールラウンドなんです。
――展示会にお呼びしたり?飛込の営業もあるのですか?
桑原:展示会にお呼びして商品を見てもらうことはありますが、基本はサンプルを持って行ったりですね。自分でリサーチもしますが、一番良いのは紹介です。自分がかつて担当していた専門店様にご紹介いただくこともあります。新規販路は今期から始まった種まきの段階で、徐々に芽がではじめています。
我々の目的は専門店様の利益を伸ばすお手伝いをすること。ここはずっと変わらない
――MOVING編集:大日方さんはいわゆるブティック営業?
大日方:はい。扱う商材やお客様は本当に幅広くなっています。これまでの「コルディア」「スチェッソ」といった卸ブランドから、おせち料理、空気清浄機、虫よけスプレーまで、もう本当に多岐に亘りますので、それをブティックだけでなくカフェや整骨院、たとえばしらすの直売所とか、いろんなお客様にマッチする商品を提案します。でも我々の目的はお店の利益を伸ばすお手伝いをすること。そこは昔から変わらないんです。

趣味は農作業(土地を借り野菜を育てています)週末は畑に通い土を耕したり剪定を。今は夏野菜のトマトやナス、とうもろこしなどが旬。また映画鑑賞も(空いた時間はほぼU-NEXT、Netflix。好きな監督はジム・ジャームッシュ、小津安二郎など)
――商材がこんなに広がっているのですね。その中で既存の営業にも行くわけですよね?
大日方:もちろん、そこがまず基盤です。自分の担当は神奈川と都内と北海道。北海道はまだコロナ禍で1度しか行っていませんが、広く担当させてもらっています。明日も小田原に行くんですよ。既存のお客様に対してもたとえば今扱っている、抗菌性のあおもり藍スプレーなどは時流柄すごく需要のある商品で、切り口にしてお客様を呼んで頂くことができますので、レジ横に置いてもらうとか。アンバーが扱う生活雑貨は既存のお店様にも積極的に提案します。
――劉さんの担当は?
劉さん:今はスーパーデリバリー(卸・仕入れサイト)の運営をやっています https://www.superdelivery.com/p/do/dpsl/1000015/
BtoBのサイトで、洋服は少しだけWRS※を扱い、メインとして雑貨を出品しています。アンバーは「スーパーデリバリー」の中に1号店と2号店があって1号店は自社アパレル、2号店が雑貨。私は2号店の担当なので雑貨になります。
※WRS:「WORLD REP SYSTEM(ワールド レップ システム)」の略称。多様化する専門店のニーズに対応するため、自社にはないテイストを持った個性溢れるブランドやメーカーの営業代行を行うビジネスモデルとして2003年に開始。
桑原:ここが新規販路のひとつの軸になっていて、たとえば仕入れ先が美容院の場合、追加で連絡をとって「発注ありがとうございます」と営業につなげていくこともしています。これは全くの飛込になりますから、先ほど話した人の紹介で進めるのはやはり近道ではあります。
大日方:美容院であればスカルプブラシとか、アプローチを我々営業で考えます。

ベテランの先輩達に囲まれ、のびのびと
――MOVING編集:かなり年齢の離れた先輩に囲まれていますが、最初の率直な印象は?
桑原:元々アンバーの納会などに、入社の時から参加をさせて頂いて可愛がってもらっていたんですよ。今はコロナ禍ですが、アンバーのそういった集まりは他部署の人もウェルカムで、畑崎 重雄元会長もいらしていて、雰囲気はわかっていた。アットホームというか、時に荒くれな感じ(笑)。
――そうですよね。MOVING編集も納会に何度も楽しくおじゃましました。
それまでずっと内勤の部署だったので、入ってみて仕事が異なるのは当然ですが、ベテランが多く、教育に長けられていて成長を助けてくれる。もう、何人も新人を見て来ているので、失敗もあれこれ言わずに、後でここがダメだったんだぞという感じで、まずやらせてみる。懐の深い教育をしてもらっていると本当に感じています。自分たちは本当に若手で、その次の若手は50歳という環境の中なので(笑)。
社長の岩切さんもやりたいことはやったらいいという感じで、のびのびやらせてもらっています。そのかわり、提案をしたらとにかくやってこいと。実際に何個もそれで挑戦しています。なかなか今そういう環境は無いと思うんです。「自分もそうやって色々やってきたから若手にもそうしてほしい」と聞きました。それはすごく有難いです。
――厳しくもあたたかな環境なんですね。

趣味は都内サイクリング、オペラ鑑賞、歌舞伎鑑賞(先日歌舞伎を観た後に寄った銀座の天婦羅屋で歌舞伎役者に間違えられたのがプチ自慢です)
―――大日方さんにお聞きしたいのですが、WP2を経験ということで、もの作りがわかるのは役立てている?
大日方:WP2も私が入社した時には既に外販を強化する方針で、そこをやってみたいと入社しました。ワールドアンバーとは違った営業ですけれども、その為の生産管理とか貿易管理などをやっていました。その後ジョブローテーションのタイミングで、今後について色んな人に相談をしていたのですが、元々私がやりたかった「ワールドが持っている生産背景を活かして外に働きかける仕事」で自分を鍛えたいと素直な気持ちをぶつけたら、ワールドアンバーを紹介してもらいました。
これまでは生産管理だったので、工場さんとかは別ですが、お客様相手にじっくりお話しをする機会は少なかった。今は100を超える専門店様や店舗とやりとりをする機会が増え、仕事自体はガラっと変わったという感じです。
――担当店舗数でいうと?
大日方:お店の数でいうと150~60ですかね。しかし更に新規開拓もして、どんどん増やしていかないといけないと考えています。
――劉さんは県知事の通訳をされていたと聞きました。
大学は中国で卒業したのち、大学院を青森で過ごしました。大学は日本語を勉強、大学院は経営学を専攻していた。卒業後は青森で全く別の仕事をしていましたので、青森から上京をして色んな意味で初めてで心配していましたが、ワールドアンバーは本当にアットホームで、周りの先輩方も受け入れてくださって色んな事を教えてもらいました。アパレルのことは今でも勉強中ですし、雑貨は少し自分も関わっていましたが、とにかく初めは知らないことばかりだった。
私の教育係だった柾木さんが付いて丁寧に教えて下さって。入った当時は海外の新規販路の開拓をやっていました。

入社するきっかけになった商品
――海外販路とはアンバーから海外へということですか?
桑原:スーパーデリバリーを通した海外輸出に加えて、プラットフォーム事業推進室とも連携をしながら直接、あおもり藍を中心に、ASEAN、特に香港とタイに出そうとしています。今回セグメントが変わってプラットフォーム事業の中にワールドアンバーも入りました。そういう意味では結びつきや連携が一層強くなっていくと思います。
人と人とのコミュニケーションがやっぱり基本
――MOVING編集:苦労する点も聞きたいです。
桑原:受け手であるお客様の都合もあり、電話とFAX中心のクラシックスタイルなところです。LINEを使われる方もいますが、メールで資料送ってとかはまず無くて電話ですから。特に初対面の方との電話はとても緊張します。これまでの部署は電話よりメール、時間が無いときだけ電話。それがここではとにかく電話が鳴りますし、かけます。
大日方:それは確かにギャップだったよね。そもそもメールをお使いにならないお客様が大半だったりすると電話だから。
――以前の営業さんの話を聞くと、店の電球を変えるとか、とにかく何でもお手伝いをしていた。それは今でも?
大日方:ありますよ。私も初めて行ったお店の戸棚を修理しました。
桑原:そうですね。自分もこの春から新規販路ですけれど、それまで1年弱、都内と茨城のブティック営業だったので。店に行ったらオーナーから「まぁ座りなさいよ」みたいな。話すことも大切な仕事ですから。電球も変えますし、お孫さんと遊んだり、世間話もお聞きしたり。
桑原:苦労ではないですが、経費感覚、キャッシュを稼ぐという感覚は本当に体感するし、稼ぐことの大変さは本当によくわかった。10万、20万の経費はこれだけ売って生み出せるものなんだと。
大日方:本当にその通りですよね、特に生活雑貨はアパレルほど単価が高くないので、これまでだったらニット1枚の上代で3~4万の所が、ひとつ1,000円代になるわけです。それを積み上げるのがいかに大変かというのは毎日感じています。
――仕事をしていて喜びを感じる時は?
桑原:たとえばブティック営業で、自分の着せ変えたものに対して、あとで電話を頂いて「あなたがやったものが売れたよ」と言ってくれたらやっぱり嬉しい。
大日方:この時期だからなお更嬉しいですよね。お店の売上が厳しいのはどこも同じで、さっきの雑談の中でお店が悩んでいることとか、原因の仮説を自分なりに考えてこうして行きましょうと提案し、受け入れてもらって、実践し、それが売上に繋がった時にまた発注をもらえる。そこで営業としての価値の結びついたのかなと思うし仕事の喜びですね。
――劉さんは?大変なことも多いと思いますが。
劉さん:自分は海外のお客様に最初の1年間は結構電話をしていわゆる営業をしていました。
大日方:このフロアの中でも中国語でね、ひとりだけね。
劉:逆に日本語の電話が周りを意識してしまうので難しかった(笑)。苦労といえば電話に出てくれないとか、なかなか話を聞いてもらえなかったりとか。それにも徐々に慣れてきました。
――みんなそうやって成長するのですね。
劉:今はスーパーデリバリーの運営をしているので、海外の営業も兼務にはなっていますが、なかなか直接営業は難しい。そういう時はメーカーさんの商品から自分で選んでスーパーデリバリーに掲載して、それを買ってくれるお客様がいたら、あぁニーズ合っていたんだと嬉しくなりますよね。

趣味は旅行と読書。最近は漫画も読み始めました。漫画を読むと、中国語ではよく使うけれど日本語ではあまり使わない言葉があるなど、様々な気づきに。コロナが収束したら旅行にも行きたいですが、まずは実家に帰りたい。
ひとりひとり異なるスキルで営業力を磨く
――MOVING編集:みなさんの夢を聞きたいです。
桑原:悩み中ではありますが、組織とか制度をつくることに関心があるので、政治家とかはやってみたいと思います。
大日方:政治家っぽいよね、話も上手だし。
桑原:あとは日本とイタリアの架け橋をしたいなと思っていて、知り合いのイタリア人のアーティストが日本に進出したいというので、アンバーの卸機能のプラットフォームが使えないかなと。社内に提案した後、イタリア大使館と連携して取組みを進めています。営業代行はアンバーでは以前からWRSであって、一層体系化できると思います。
大日方:入社の頃にも考えていたのですが、ワールドに対する自分たちの年代の認知度は正直低くて、自分はアパレルに行きたかったので知っていたのですが。実際にWP2からアンバーを経験して、中に入って知るワールドの良いところがたくさんあって、だからそれを自社に限らずに外に発信できればと思っています。
――大日方さんは学校では何を?
全然関係のないことをしていて、ゼミでも元々プログラミングをしていたんです。でも服が好きだったので、就職活動ではアパレルを志しました。
――劉さんの夢は?
劉:以前は一人前の通訳者になりたかった。今はそれも傍らにありつつ、社員として普通にどこの会社でもちゃんと働けるようになりたい。
桑原・大日方:夢は叶えてますよね(笑)。
劉:次の夢は何だろう。でもワールドでは働けるけれど、次のところに行ったらと考えるとまだまだスキルアップをしたいです。
桑原:営業って、無形遺産というか本当にひとりひとりのスキルなんです。誰に聞いてもやり方が違うし、自分なりのベストな方法を磨いていきたいですね。

ワールドの卸事業 少しだけクロニクル ~60年代には現在のプラットフォームの根幹が生まれていた~
ワールドの卸ブランド1号は1967年にデビューした「ワールドコーディネート」。
「ワールドコーディネート」はその後1980年に「コルディア」に名称変更をしながら、世代を超えて多くのお客様に愛されてきました。
創業者が度々ヨーロッパ各国を視察し、最先端のファッションや街行く人々の着こなしを見て、100年余りの歴史しか持たない日本の洋服文化をいかにしてバランスとセンスが高められるかと考えた時「一輪の美しさでなく、ワールドは花園の美しさで売ろう」と、ブランド開発を志したものです。
「花園の美しさ」を具現化するために、様々な改革が進められました。商品をコーディネートで効果的に販売する為に、ワールドの商品だけを扱う専門店「オンリーショップ」制を、さらに店舗の設計・施工から什器、備品、販促物の製作や販売員のノウハウまで、ソフト面の開発も推進しました。1970年にはディスプレー専門のセクションとして「SC(セールスコーディネート)」部門を新設。海外から講師を招いてスキルに磨きをかけたほか、店舗設計を行う装工部も設け専門店様の改装に取組みました。
当時のカタログの中には社員自らが手作りでコーディネート、ヘアメイク、撮影をしたものもあり、その完成度の高さと熱量に圧倒されます。
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当時からVMDを強化し、後のワールドグループのノウハウに繋がっていく

「トータルファッション」のワールドとして打ち出しをスタート

パンタロンスーツやマキシコートが一世を風靡したころ

モデル3人がミラノの街中を颯爽と歩く
次回はワールドアンバー後編として、新たに開始した「うごく展示会」について、ベテラン社員のインタビューを交えてレポートします。






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