ワールドプロダクションパートナーズが昨年から手掛けるサステナブルをテーマにしたブランド「be released （ビーリリースト）」は、秋の新作を発売しました。8月20日（金）から29日（日）までRAGTAG渋谷店で、その後9月23日（木）から10月3日（日）までRAGTAG福岡店でポップアップを行ったほか、「ラグタグ」の公式オンラインストアでも販売中です。

「ビーリリースト」は、「ラグタグ」でお客様からユーズド商品を買取る際に、値段が付けられずお客様の希望に応じて引き取った品物を対象にワールドグループのデザインとパターン、縫製技術で新たな価値を付加した商品として販売をする取組みです。

今回はプロジェクトを手掛ける4人のメンバーにインタビューをしました。

ワールドグループの技術をフル活用し、社内コラボも進めたい　/　SCM第一部　生産管理１課　坂口将平さん

元々服が好きということもありますが、サステナブルに関心を持ったきっかけは学生時代にあります。バックパッカーとして様々な国を旅行する中で訪れたインドで、まだ小さな子供たちが大人に混じって仕事をしている風景に出合いました。その様子を目の当たりにして貧困問題、そしてフェアトレードやSDGsへと興味が広がっていきました。

現在は主にキャリアブランドの生産管理がメインですが、「ビーリリースト」を取り組む際に、入社面接でサステナブルに興味があると伝えたことを、松原さん（WP2副社長）が覚えていて下さって、「ビーリリースト」の取組みに声をかけていただきました。

「ビーリリースト」として２年目の取組みで、後輩２人もメンバーに迎えて議論をする中で、アップサイクルとして作った商品を手に届けないと意味が無いなと。価格もできる限り抑え、自分達が考えるトレンドを加味しました。我々は生産のプロフェッショナルですが、MD、例えば上代を付けることは初めての取組みでした。

「ラグタグ」の国立の倉庫には何度も足を運びました。目と手でひたすら仕分け作業をするのは大変ではありましたが、 大量に廃棄されてしまう商品を目のあたりにすると気づきやアイデアも広がります。

今後はWP2発信のブランドとして、ワールドグループ内での認知も広げ、ブランドと一緒に取り組めればと思います。余剰在庫を活用したり、売場での展開などお客様のサステナブルに対する意識の高まりと共に可能性は広がります。将来的には自分達のこの取組みを経てアップサイクルのスタンダードが作れればと思います。

新たなメンバーも入り、商品構成も進化できている /ＳＣＭ第1部　生産管理1課　石井美加さん

「ビーリリースト」は2年目の取組みになり、メンバーも増えました。まず感じたのは、新人たちが自分達の意見をしっかりもっていること。どんな取組みにしたいか、デザインにしたいか、プレゼンする能力も資料で表現することもできます。私はそれを形にしていき、チームになってきたなと感じます。週１度のミーティングではどんどん質問も出て、そこから発売に向けて形をつくっていきました。皆で素材を広げ、意見交換をしながら創り上げる。大変だけれど楽しい過程です。

前回から進化したのは、坂口さんも話されていますが「せっかく作るのだからまた在庫を残さないように、循環していくこと」です。

縫製はアイテムによって効率も考えて、たとえばパターンのニュアンスが大切になるティアードスカートは裁断までを北青山まで行い、キットの様な形にしてワールドインダストリーファブリック岡山に送り仕立てています。一方Tシャツは全て北青山ビルで手掛けました。またワールドインダストリー富山のオリジナル抗菌防臭加工は、効果のある素材によって使い分けて施しています。

下期は昨年も取り組んだ杉野学園とのインターンの受け入れの他、産学連携の取組みも続きます。ここは次世代育成の要素が多いですが、継続することで、私たちのアイデアの創出にもつながると考えています。

WP2でこの様なことを手掛けていること、またグループ内の「ラグタグ」と取り組んでいることを含めて、「ビーリリースト」をはじめとするアップサイクルの取組みをもっと多くの方に伝えたいですね。

※昨年のMOVINGで取り上げた、産学連携特集の石井さんのインタビューはこちらから。

　学生との取組みのほか、国立の倉庫での商品選びも紹介しています。

　https://test.world-moving.jp/ourteam-wp2/

新規事業や、これから発展する事業に携わりたい / SCM第1部　ミドルアッパー1課 若尾亮さん

信州大学の繊維学部で学び、WP2に入社しました。大学の研究室では、たとえば3D着装シミュレーションシステム「CLO Enterprise（クロ エンタープライズ）」を使い、オンライン上でアバダーを作り服の圧力で試着をしなくてもフィット感がわかるシステムなどを学んでいました。これらはシャツのオーダーといった技術にも活かされるものです。

今は生産管理を中心に、一部「ローラ アシュレイ」では、島精機の「APEX（エイペックス）」というシステムを使いながら英国から送られてくる花柄の色を変えたりという業務にも携わっています。

学生時代はシステムが中心でしたがファッションにももちろん興味があり、廃棄を減らす課題に対しても問題意識を持っていました。今回メンバーになり、毎週の打合せを経てデザインを皆で考えてる過程、またその前段階として、商品の選定も行いました。

商品の選定では、10回以上国立の倉庫に通いました。ハイブランドで状態も良くまだまだ着られるのに、数シーズン前という理由で廃棄に回ってしまう現実とも向き合いました。とにかく凄い商品量です。

ワールドに入社した時、まだ世の中にないサービスやモノに携わりたいと考えていました。「ビーリリースト」はそのひとつで、デザインを皆で考えていくことは楽しさや、実際の縫製や工賃などの課題と向き合いながら販売に繋げる喜びもあります。これからももっと多くのことを学び、意見を出していきたいです。

アパレルの課題に向き合いたい。チームの一員になりサステナブルに向けて一歩を　/企画管理部　貿易課　秀野璃子さん

学生時代は国際交流学科に在籍したこともあり異文化における難民支援、人道支援などを学びました。そこから商社で貿易、生産に携わりたいという思いで就職活動を行い、ファッションも好きだったことでWP2に入社しました。

学生の頃から、ファッションは表向きは華やかでも、海外における生産の現場や在庫問題などの実情を知り、これらの課題と向き合いたいという思いがとても強かったので、今回「ビーリリースト」のメンバーとして関わることができたのは、私にとって手掛けたいことにつながる一歩となりました。

きっかけは、先輩の坂口さん、同期の若尾さんと共にワールドインダストリー岡山に研修に行く機会があり、その時にこの取組みを聞いたことです。今回はまずは打合せに入り、またビジュアルのモデルとしても携わらせていただきました。余剰在庫から商品を作るということは、サステナブルにつながることはもちろん、素直に古着と古着を合わせてできたデザインを見て、可愛い！と感動。シャツから仕立てたオーダーバッグも購入しました。

今はワールドグループのロワーブランドを中心に、貿易業務に当たっています。実務として経験を重ね、また経験豊富な先輩方からも多くを学んで、将来的には人道支援の様な、世界全体を俯瞰して問題を捉えて、変えて行くような仕事がしたいと考えています。

お好みのシャツ生地からバッグがオーダーできるイベントも

「be released」公式Instagram　

役目を終えた服に新たな命を吹き込むリメイクブランド
サステナブルとファッショナブルの両立を体現する。

公式Instagramでは商品やものづくりの様子も紹介しています。

https://bit.ly/3fJDqcL

取材を終えて――　昨年から倉庫での商品選定に同行したり、ものづくりの様子を取材しましたが、今回入社２年目のメンバーにインタビューをして、この世代が入社前から余剰在庫をはじめとする課題を深く認識していること、意見を伝えて実行しようという逞しいパワーを感じました。手仕事の技術に加えて、若尾さんの様に学生時代からデジタルを学び、実践にも活かされている点もグループとしての可能性に繋がると思いました。

なお「ビーリリースト」というブランド名は、かつてワールドが1985年にデビューさせた、当時はコレクションも行っていたデザイナーズブランドです。ブランドは時代を超えて、新たに生まれ変わっていきます。（MOVING編集）