未来をつくるデジタルプラットフォーム×次世代クリエイション/パート3
ワールドの成長戦略の大きな柱の一つ、デジタル事業。ファッション業界の移り変わりと共にファッションとデジタルの関係はどう変化し、どう進化していくのでしょうか。今月の特集は、「未来をつくるデジタルプラットフォーム×次世代クリエイション」と題して、ワールドのデジタル事業について3回に分けて掘り下げました。パート1では、Dビジネスユニットのメンバーにこれからのワールドのデジタル事業の戦略や背景について伺いました。続いてパート2では、Dビジネスユニット ユニット長 池上貴尉さんとbig株式会社 代表取締役社長の中島真さんの対談の前編をお届けしました。ラストとなるパート3では、対談の後編をお届けします。前編でのお話に続き、今年8月末に北青山ビルで開催されたbigデザインアワード、そして、11月末に開催されたbig Collective Impact talkなど具体的な取り組みについて掘り下げていきます。

左)株式会社ワールド D-GROWTH戦略本部 副本部長 兼 Dビジネスユニット ユニット長 池上貴尉さん
今年8月に開催したbigデザインアワード。その意義はどこにあったと思いますか?

中島:まずは、世界中から優秀なクリエイターが東京に集まったこと自体にとても意義があったと思っています。それに派生する話なのですが、海外のクリエイターは東京を非常に高く評価しているんですよね。「先進的で刺激もあるし、それでいて日本独特の文化的背景もあり、その背景はとてもナチュラルで、今の時代とフィットしている」というように。今回のアワードでは、海外のクリエイターの視線を通して東京のポテンシャルをあらためて知ることができたという意味でも、意義はとても大きかったです。実際、アワードの後、東京でビジネスを始めたいと希望するクリエイターからの声もあるのですが、その背景には、東京の魅力に加え、ヨーロッパのトラディショナルなファッション界の現実があります。伝統を重んじるヨーロッパのファッション界では、新しいことを起こす手応えが感じられず、今からその世界に入ったところでレッドオーシャンだという現実もある。そういう中でクリエイターは今、アジアに魅力を感じているし、今回のようにアワードをやれば手を挙げてくれるわけです。今回のアワードでは、アジアのマーケットへの彼らの意欲や期待を感じられたと同時に、ヨーロッパファッションのレガシーとクリエイターを取り巻く現実も見えました。また、国際的なアワードを東京で開催できたことは、もともと東京で活動しているクリエイターにとっても刺激になったと思っています。


池上:応募は30カ国からきて、海外5割、日本5割くらい。ファイナリストに残ったのは14組のうち2組が日本人クリエイターでした。審査員長は世界有数のデザイナーや芸術家を輩出する名門で350年以上の歴史を誇るアントワープ王立芸術アカデミーの学長を務めるウォルター・ヴァン・ベイレンドンク氏。彼を始め、錚々たる方々が審査員を務めましたね。

中島:そうですね。そのことについては、まず第一にウォルター氏の教え子でもある坂部三樹郎氏とのご縁からというのが大きかったです。それと同時に、先ほどの話とつながりますが、ウォルター氏自身もいちクリエイターとして東京に魅力を感じているといるということも大きかったようです。
池上:アジアはヨーロッパと比べると発展途上というか、まだ固まっていないんですよね。ヨーロッパは「これが王道」というように固まっている感じがありますね。
中島:そうですね、確かに固まっていますし、そこに入るためのネットワークやルートが必要なのだと思います。
今後bigデザインアワードをどうしていきたいですか?
中島:長く続けていくことが大切だと思っています。アワード自体の規模を大きくしたいという気持ちはないのですが、世界中から1000人くらいの応募が来るくらいに認知度をあげたいと思っているので、まだまだ伸びしろがありますね。

池上:そうですね。アワードは新たなクリエイターを発掘する機会だと思っています。さらにそこから、アワードの後のインキュベーションも考えなければならない。まだ仕組みが整っていないので、そこを一緒にどうつくっていくかはとても大事だと思っています。これまでよりもクリエイターとの距離が近くなったことで彼らをサポートしていく上で何が課題になるのかがだいぶ見えてきたので、ワールドはもちろん、ファッション業界全体を巻き込みながらその仕組みをつくっていくことも、これからの課題ですね。アジアは凝り固まっているものが無いぶん、新たにつくっていけるという意味ではチャンスだと思います。
中島:初めての取り組みを模索しながらやっている人が多くて、おもしろいですよね。
アワード開催と同時期に北青山ビルの地下1階にはラボも誕生しました。今後、クリエイターをどうサポートしていきたいですか?
池上:ラボというつくり場をつくったことで、クリエイターが使ってくれるだけでなく、クリエイター同士のコミュニティが生まれています。そこにワールドもリーチできたことで、彼らのニーズが具体的に見えてきました。ひとりひとりのクリエイターが実際に事業としてブランドを成長をさせていく段階においては、ワールドの培ったノウハウやプラットフォームを活かせると思っていますので、彼らのニーズに合うように、何をどう提供していくか、柔軟なモデルケースをつくり、様々なクリエイターに提供できるような枠組みをつくっていきたいと思っています。同時にワールドのメンバーがクリエイターの方々から受ける刺激もあるし、その刺激は仕事においてもシナジーがあるはずです。ものづくりの原点に回帰することはファッションにおいてとても大切なテーマだと思うので、そこはワールドグループのメンバーもモチベーション高く巻き込まれて欲しいと思いますよね。

中島:時期は最終調整中ではありますが、来年の開催ももう決まっていますし、春くらいから募集をかけていくことになると思います。楽しみですね。海外のアワードとの連携も視野に入れていますし、より海外での認知を高めたいと考えています。たくさん応募が来るといいなぁ。
池上:ワールドはもちろん、他にも巻き込む人や企業を増やしたいですね。
11月27日、big Collective Impact talkが開催されました。テーマは「ファッションデザイナーの定義の拡張・再構築」。これはどういうイベントだったのでしょうか?
中島:ファッションデザイナーが異業種や異業界とつながっていくことに可能性があると考えていて、そのうちのひとつはテクノロジーとかだと思っているのですが、テクノロジーに限らずとも思っています。掛け算で新たな流れをつくれるといいなあと思いますね。
<トークセッションプログラム>
「新しいブランドのつくり方」 吉田圭佑(KEISUKEYOSHIDA デザイナー)×家入一真(CAMPFIRE代表取締役)

「ファッションとテクノロジーの交錯点」
川崎和也(Synflux主宰)×池上高志(複雑系研究者/東京大学大学院総合文化研究科教授)

「ファッションとプロダクト」
堀内太郎(TARO HORIUCHI デザイナー)×宇野良子(認知言語学者/東京農工大准教授)

「多次元化するファッションの世界 -3Dクロスシミュレーションとその可能性-」 長見佳祐(HATRA デザイナー)×佐藤晃(Psychic VR Lab UI/UXデザイナー)

「ファッション教育の未来」
坂部三樹郎(MIKIO SAKABE デザイナー)×朝吹真理子(作家)

池上:うちのチームメンバーから、会場は最初から満席で大変盛況だったと聞いていますが、どういう方がいらしていたんですか?
中島:いろんなジャンルの方がいらしていて、例えばテック系の方だと人工知能関連の方や、投資や新規事業関連の方、もちろんアパレル業界の方もいらっしゃいましたし、ファッションアカデミック系の方や研究者の方もいらっしゃいました。あと、これからデザイナーを目指している学生も来ていました。登壇していただいた10名はすでに先進的な取り組みをされている方々なのですが、トークセッション後のネットワーキングの時間で登壇者と参加者が垣根なく話している風景が印象的でした。、この日ここに集った人同士がつながって新しい何かが始まるきっかけをつくれたらと思っています。
池上:そういうきっかけって大事ですよね。そこからすぐにビジネスが生まれるわけではないかもしれないけど、つながりがうまれることでコミュニティが生まれて、そこから新しい取り組みが広がっていくこともありますし。
中島:ワールドも最近いろいろイベントやってますよね。
池上:そうですね。今年の9月に北青山ビルで開催した246st MARKETでも様々なつながりが生まれました。出店してくださったD2Cブランド同士のコミュニティもできましたし、やはりそういう機会を意識的につくっていくことは大切だと思います。
お話は尽きませんが、最後にワールドグループの社員に向けてメッセージをお願いします。

中島:いつもお世話になっています!ありがとうございます。私からは感謝の気持ちに尽きます(笑)。これからもおもしろいことをご一緒しましょう。
池上:今は、個のクリエイターの人たちにとってチャンスの時代と思っています。そんな中でワールドがこれまで培ってきたものを活かして彼らに貢献できることはたくさんあると感じています。bigとの取り組みはワールドにとっては、クリエイターをサポートする形で新しいブランドをつくっていくという取り組みのひとつだと思っているし、そこには未来への可能性が広がっていると思っています。クリエイターの方の存在をより身近に感じて欲しいし、彼らは特別な存在ではあるけれど、自分たちと全く別のレイヤーにいるというわけではないということを感じて欲しいと思います。自分たちが日々取り組んでいる仕事は必ず、その先につながっていますし、その先の仕事をする上でのベースになります。これからの新規事業のつくり方には様々なアプローチがあるので、若手メンバーにも積極的に関わって欲しいですね。これからの時代に合わせた新しい事業のつくり方は、もう既に生まれ始めています。私もがんばります。お互い日々の仕事をがんばって、自力をつけて、一緒にやっていきましょう!






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