ものづくりはひとづくり
最近メディアにおいて、ワールド・グループの「ものづくり」について触れられる機会が増えてきました。
グローバルでの環境変化を踏まえて、2年ほど前から百貨店アパレル事業を中心に、
製造拠点を海外から自社工場を中心とした国内に移管していく動きを加速しています。
そもそも、ワールド・グループはニット卸から始まり、1978年に岡山に設立した布帛工場から自身でのものづくりが出発しました。その後1987年には他社資本の工場をグループ化し松本のニット工場がスタートしています。
90年代にSPAモデルを先んじて確立した時も、自社工場と店頭が一体となることで圧倒的なスピードを実現し、2000年代から将来の生産基盤の構築に取り組み続け、国内アパレル随一の国内生産拠点を保有しています。
当時は海外生産の方が製造原価が安く、国内製造基盤を持ち続けることに批判の声もあったようですが、いずれ来る「つくれない」リスクや「つくること」の技術・知見を高める基盤として守り続けてきました。
そして、いま当時の想定通り、実際に世界で起きる様々な地政学リスクが顕在化してきています。たとえばコロナ禍に伴う大幅な製造遅延や、労働単価の急激な上昇、物流コストの上昇、急激な円安など、そもそも作り場も限定されてきました。
そんな中、長年培ってきた国内製造基盤がグループの大きな強みとして活き始めてきています。
「ものづくり」とは一日にしてなるものではありません。「ものづくりはひとづくり」とよく言います。
熟練した技術者を育成するには相応の時間がかかりますし、製造ラインの流れは日々現場が知恵を絞って工夫を凝らし続けねばなりません。
自らつくるからこそ、企画と一体で商品の品格を高める取り組みや、部材やサンプル工程を自身で分解し、コスト構造を改善する取り組みも求められます。
全ては「ひと」のなせる技であり、日々の現場の知恵と技術の積み重ねだけが、高品質かつコスト競争力ある安定供給を実現します。これは、単に商社や取引先任せの商品づくりをしていては決して得ることのできない大切なノウハウです。
自ら作ることについての理解を深めなければ、取引先の提示するコストや品質が正しいものか判断する基準を持つこともできないのです。
「ものづくり」の改善に終わりはなく、その改善は「ひとづくり」によって成し遂げられます。
グループとしての大切なミッションを持つ自社工場の皆さんには、「強い工場」であることを常に追求し続けてもらいたいと願っています。
「ものづくり」の最前線を担っている工場の皆さん、これからもグループの誇りをもって、意欲的に改善に取り組んでいきましょう。
また、MDをはじめとした企画や生産、店頭で販売に関わる皆さんも「ものをつくる」とはどういうことか、を改めて考え、学んでほしいと願っています。
自らが携わる商品の成り立ちを現地現物で体験することは、店頭での接客経験同様に全てのアパレル事業に携わる皆さんに不可欠な経験です。
「ものづくり」を学ぶことは、グループが歩んできた歴史そのものの理解や商品の成り立ちや、原価構造への理解を深めることにもつながり、更には次世代の新たなビジネスモデルの発想にもつながっていきます。
これからのSDGs社会は自分たちがつくるものに責任を持つことを強力に求めています。
誰が、どこでどうやって、つくったのか分からないものは、販売することを許されない時代がやってこようとしています。
その意味でも、ワールド・グループの「ものづくり」を国内製造のみならず、自ら意思をもってコントロールする海外の取り組みにも広げていかなくてはなりません。
経営方針でも申し上げた「商売の基本の徹底」には、販売サービスという「顧客づくり」の改善に加えて、こうした「ものづくり」の改善が不可欠です。
より「良い」ものを、より「安く」、より「早く」つくり、店頭やECでより魅力的に「伝える」こと。
これが「商売の基本」であり、お客様への付加価値を高めることに直結します。
繰り返されるコロナ禍の影響で思うように進んではいませんが、このワールド・グループの大切な資産を最大限に活用せねばなりません。
経営方針にも掲げたように、社内の(特に若手の)皆さんに、ものづくりの現場・現実を理解する場面を提供することで、グループとしても「ものづくり」を通じた「ひとづくり」を進めていきます。
最後になりましたが、オミクロン株の感染爆発の中、店頭そして工場の皆さんが最前線を守り続けていただいていることに深く感謝いたします。
酷暑がまだまだ続きますが、グループ一丸となって乗り切っていきましょう。
鈴木 信輝






コメントはこちらまで