HIROKO HAYASHI (後編) ~モノを買うことは精神性を買うこと~ フィロソフィーを体現する売り場と人

好き

大人の品格と遊び心を兼ね備えたバッグと革小物を提案する「HIROKO HAYASHI」を唯一無二のブランドとしているチーム力とは。前編 “つくる”では、ものづくりを支える3人の鼎談をお届けしました。後編では、社長の佐々木さんに “つくる” “売る”それぞれの現場の役割と現在地を伺った上で“売る”役割を担う店長、EC担当、プレス、SVにそれぞれの視点からお話を伺いました。

“つくる” ~世界観を担うシーズン企画と、打率をあげるMD企画の設計バランス~

前編でもお伝えしたように「素材を生かしきるデザイン」はチーム皆で常に追求しています。独自の哲学を追求する「HIROKO HAYASHI」ですが、時代の変化は敏感に察知するよう意識。例えば、昨今のキャッシュレス化に伴う財布の小型化や変化は、海外市場も鑑みながら想定し準備していました。近い将来、遠い将来を常に想像し打ち手を練ることは、アパレル同様に全てのブランド事業において非常に重要なことと考えています。
定番とシーズン企画の割合はおよそ8:2、その2割の中でさらにデザイナーが「今作りたいもの」と、ニーズを反映させたMD企画に分けています。これまでの蓄積で売り切るためのバランス、数量が見えていますので、シーズンごとに鮮度あるラインナップが生み出せる循環に。更に昨今のセール時期に見られる「今本当に欲しいものをプロパーでも買いたい」という消費者動向を見据え、来期からはセール対象になる品番を減らした設計に変えています。

“売る” ~出合いの場としての店、目的買いのオンラインの双方で~

店舗空間は時代毎に進化し、渋谷や梅田の新店はよりクリーンなグレーを使った明るい印象に。多くの新しいお客様に「HIROKO HAYASHI」を知っていただけるよう、間口も広く入店しやすい環境にしました。
スタッフの誠意ある応対はお客様からお褒めの言葉をいただくことも多いです。また、スタッフのお聞きだしの力も年々レベルアップしており、日報にはお客様の言葉をなるべくそのまま記載してもらっています。お客様からのダイレクトな声が売り場メンバーを通して、クリエイティブに届き、商品づくりに生かされ、再びお客様の元に届くという進化と循環が生まれています。
一方、次世代も獲得するオンラインの販売はおよそ4割。今後のインスタライブでは、鮮度を重視し素材やデザインを深堀りしていく内容に進化させていきたいと思っています。
最後に、インバウンドです。昨年10月から右肩上がりで、店舗には台湾、シンガポール、インドネシア、米国、カタールと海外からのリピーターも増えています。評価されている点は、「HIROKO HAYASHI」ならではの「オリジナリティ」と「感度」。今後さらに伸ばしていきたい領域です。

2月の店長会で、ブランドメンバーと共に

―――このあとは“売る”を担う4名にインタビュー

左から)大島さん、牛丸さん、藤野さん、千葉さん。インスタライブ終了後に撮影

客観的視点でお客様と「HIROKO HAYASHI」の出合いをサポート 渋谷スクランブルスクエア店 店長 牛丸 真実さん

2015年入社後、恵比寿三越、青山、日本橋三越を経て渋谷スクランブルスクエアに配属。昨年8月から店長に

昨年の8月、千葉SVから引き継ぐ形で渋谷スクランブルスクエア店の店長となりました。新しいメンバーも加わり良いコミュニケーションでチームワークが高められるよう日々努めています。

「HIROKO HAYASHI」の魅力は、他にない特徴的なデザインで刺激が得られること。私自身、学生時代にたまたま銀座EXITメルサ店の前を通りかかったのがブランドとの出合いでした。この店はなんだろう?少し敷居が高かったものの、入店してその空間にいるだけでワクワクし、面白い商品が並ぶ世界観に驚きました。その後その体験が忘れられず入社し今に至ります。このような入社の経緯もあり、その感動をお客様視点で大切にしています。

様々なデザインからお客様にお選びいただくためにどうすべきか、常に意識しています。会話の中で、「普段どのようなスタイルが多いですか?」とお伺いしながら、洋服や身に着けているアクセサリーや小物も拝見し、お客様全体の雰囲気を見て提案します。デザインが効いた商品が多いので、その方に似合うものを第三者の目でひと押しして差し上げたい。客観的な視点が入ることで、お客様に納得いただけるのだと感じます。

スタイルスナップで前比アップ ~チャネル特性を活かした買い物体験の向上を EC担当  藤野 裕行さん

2017年入社後、銀座EXITメルサ店や小田急百貨店新宿店を経て、2022年から本部へ。現在はECを担当するが、店長の経験を活かし、インスタライブへ出演する機会も

EC担当となって、特に力を入れたのがスタイルスナップです。ワールドグループアワードではスタイルスナップ売り上げ部門(ライフスタイル・デジタル)で渋谷スクランブルスクエア店が受賞しました。革小物をどう見せていけばよいのかが課題でしたが、店舗とタッグを組んでお客様に伝わりやすい撮り方や商品コメント、文章を統一し、見栄えとわかりやすさに取り組みました。

革小物は個体差があるので、実物を見て購入したいというお客様もいらっしゃいます。それをECで補えないかと思い、スタイルスナップに加えてブログに力を入れました。スタイルスナップ経由でのEC売り上げ率は前年比も大きく伸ばせていて、数字を可視化し各店舗と毎週共有します。可視化された数字を見るとスタッフのモチベーションもあがりますよね。スナップはお客様への提案の一つにもなります。

ECの商品詳細ページは誰が見てもわかりやすい情報を、一方でブログは手触りや実際の感触なども含めて、まるで店頭での応対の様にかみ砕いた内容を文字で伝えられるように。EC担当としてこれらの取り組みを通して若年層の「HIROKO HAYASHI」ファンを増やしていきたいです。

渋谷スクランブルスクエア店のインスタライブに潜入  

1月26日、閉店後の渋谷スクランブルスクエアで、この春の新作「FORATA(フォラータ)」の魅力をお伝えするインスタライブを配信しました。翌月に迫ったバレンタインギフト需要も見込み、店頭ディスプレイで商品をチョコに見立てた演出も。プレスの大島さんと店長の牛丸さんがお客様のコメントに答えながら丁寧にその魅力をお伝えしていきました。

商品の説明をする大島さんと牛丸さん。お客様のコメントに答えながらおよそ30分
使う時の手の動きを見せながら、仕様や革の特徴を伝える
紹介した春の新作「FORATA(フォラータ)」。なめしたやぎ革にレーザーで穴をあけ洗いをかけたあとに染色したもの

「HIROKO HAYASHI」Instagram @hiroko_hayashi_official

「飛び越えて、遠回りして、最高の到達点を見つけてから現実的な地点へ」 固定概念の排除から生まれる「HIROKO HAYASHI」のオリジナリティ  プレス 大島 智子さん

ワールド入社後、オゾックやインデックスを経て、2011年からHIROKO HAYASHIに。現在は、ココシュニック、ヒロフ合わせて3ブランドを担う

林ヒロ子さんが仰っている「最初から落としどころを目指して着地しない。もっと飛び越えて、遠回りして、最高の到達点を見つけてから現実的な地点に落とし込んでいく」ということが、ものづくりとブランドの世界観につながっています。このものづくりのプロセスが、市場における差別化につながっています。「HIROKO HAYASHI」の商品は消費物ではない。今は使わないけれど持っていたいと思わせる、まるでアートコレクションのようにも感じるラインナップが魅力だと思います。

プレスとして、この独自の世界観とヒロ子さんのメッセージを発信するにあたり、どんな言葉を選び取るかに心を砕きます。時には詩集を読み、気持ちを切り替えてテキストを作成することも。ヒロ子さんが「モノを買うことは、精神性を買うことだ」と仰る「HIROKO HAYASHI」の哲学を伝えるために、ありふれたフレーズに逃げず、言葉を紡いでいきます。

プレスの活動のひとつとして、ヘビーユーザーをお呼びした座談会をこれまでに2回開き、多くの声を聞くことができました。これまで財布に機能性しか求めていなかった方が「HIROKO HAYASHI」に出合って金銭感覚が良い方向に変わったり、その日の気分で財布を変えていいと考えが変わったなど、持つ人の固定概念を覆してしまう力があることに改めて驚きました。今後は更に幅広い世代の人に知ってもらえるブランドになりたいです。

大切にしていることは「自分で考えて、動くこと」 ストアSV 千葉 真弓さん

2006年入社後、恵比寿三越店、日本橋三越本店、渋谷スクランブルスクエア店を経て現在は全店舗を管轄するSVに

「HIROKO HAYASHI」の商品は、常に新しい発見ができることが魅力です。店舗へ行けば、バッグや財布をきっかけに、自分の中にあった好みや思考などの思い込みの殻を破っていけるような商品があること。さらに、その商品をお客様に自分の言葉で提案出来るスタッフが揃っていることはとても心強いです。

スタッフの一人である銀座 EXIT MELSAの高橋さんは「ブランドを知ってもらうため、これからのファンを作っていくための伝道師になりたい」と語ってくれました。SVとして各店舗を回り、スタッフと語る中で、商品愛やブランド愛、さらに仕事への愛着など、それぞれの強い“愛”が根底にあることに気づかされました。そして、その想いが売り場の運営に活きています。このような素敵なスタッフがたくさんいることが、お客様から支持されている要因の一つだと感じています。

そんなスタッフのみなさんとやり取りをする中で、SVの私が大切にしていることは「自分で考えて、動くこと」。さらに「相手のことを思って行動すること」。スタッフとのコミュニケーションを増やし、一人一人がどんな人で、どのような思考のパターンを持っているかなど、会話の中から相手を知るヒントを得ることで、適切なアドバイスや提案が可能になります。このことはお客様への応対にも生かされると思うので、各店舗のスタッフにも大事なことだと常に伝えています。

日々商品に触れる4人は何を愛用しているのか、拝見

牛丸さんの愛用品は、上)ガトーパルドのポーチ 右下)シッシの長財布 左下)オリーボのコインケース 
藤野さんはデザインが目を引くレオのバッグと、カラーティやドーロの財布を紹介
大島さんは歴代のジラソーレをピックアップ。全て限定色
千葉さんの愛用品は、柄が印象的な2アイテム。上)パリオのミニモ 下)スージェオの名刺入れ
アクセサリーも展開する「HIROKO HAYASHI」。牛丸店長の愛用品から

取材を終えて――

「HIROKO HAYASHI」を唯一無二のブランドたるものとしていること。“作るから売る”まで、皆さんがワンチームで繋がっていることだと感じました。それが実現できているのは、一人一人が当然のこととして「HIROKO HAYASHI」の哲学を大事にし、ブランドへのリスペクトを持っているからではないでしょうか。今回の取材を通して、改めて共通意識・理念を持つことの大切さを考えさせられました。

コレクション「グーフォ」をバレンタインのチョコに見立てた店頭ディスプレー

OUR TEAMのアーカイブ記事はコチラから

2023年2月の新着記事はコチラから    

コメントはこちらまで

新着記事

  • あの日の記憶を次世代に伝える  ー 阪神・淡路大震災 30年

  • 2月22日(土)開催!よみうりランド招待イベント 「ワールド スペシャルデー!」 ★参加申込 受付中★ 

  • 「WORLD GALLERY」写真募集スタート -ワールドグループの皆さんの活動を、写真でシェアしてください!

  • 全国美味いもん探しの旅 🎍 お正月編 🎍

  • 表彰店舗・ドレッサー紹介 🏆 今月は「リフレクト」京阪百貨店守口店、「リサマリ」 アトレ亀戸店 蜂谷 ゆりなさんにインタビュー!