もし大学生がワールドのESGレポートを作成したら vol.2
昨年6月にワールドグループが発表した「2022 ワールド サステナビリティ プラン」をベースに「もし大学生がワールドのESGレポートを作成したら」というテーマで昨年9月にスタートした慶應義塾⼤学 保⽥隆明ゼミとワールドによる産学連携プロジェクトの最終報告会レポートをお届けします。
■9月に開催したキックオフワークショップの様子はコチラから。
「2022 ワールド サステナビリティ プラン」を読み込んだ上で、それぞれのチームに分かれて、ゼロからワールドのESGレポートを作成するという今回の取組み。最終報告会では各チームのプレゼンテーションを鈴木社長、グループ執行役員の髙橋啓介さんが講評しました。
各チーム発表前の最終チェック~いざ本番へ
プレゼン直前、各チームが入念に最終チェックをしていました。リラックスした表情のチームもあれば、緊張感のあるチームも。いよいよ数か月に亘って練ってきたプランの発表です。






最終報告会は、鈴木社長からの「ESGはどの会社も現在進行形で答えを探している非常に大きなテーマ。今日は消費者としてもど真ん中の世代のみなさんのいろいろな考えを聞けるのが楽しみだし、刺激を受けたいと思っています」という期待の声からスタートしました。

未来のワールドの価値創造を見据えた多様な提案の数々
発表は全部で5チーム。プレゼンテーションは日本語か英語のいずれかを選択し、グローバルな雰囲気の中で様々な観点から提案が発表されました。
チーム1~「サステナビリティとESG戦略を融合したレポートの提案」
サステナブルな活動がどのぐらい経済的価値を向上させるかを可視化し、その結果、株主のインセンティブにつなげたいという考えをプレゼンテーション。具体的な提案としては再利用可能な段ボールの利用や納品用ハンガーのリユースによるCO2削減率の数値化を公表し、株主のインセンティブにつなげていくというもの。提案に対し鈴木社長からは「やりたいと思うが、現実的には店舗での段ボールの置き場所等の問題や、削減だけではコストがアップすることもあり、取り組むためにはより具体的が求められる」など、今後に期待をこめながらも具体的なアドバイスがありました。


チーム2~「ワールド独自の強みを生かしたサステナビリティ戦略」
「サプライチェーンの上流から下流まで全体をカバーしていることがワールドグループの強み」として、紐づく取組みや評価をサステナビリティプランに盛り込んでいくことの必要性を提案。さらに、新たな提案としてお客様が手にとるタグを通じて、サステナブルな取り組みを直に伝える「ESGタグ」の導入がプレゼンテーションされました。提案に対して、鈴木社長からは「良い取組みだと思うし当社でも検討をしているが、紙でタグをつくること自体が環境負荷につながる可能性も否めないので何らか他の伝え方はないのか」というコメントがありました。


チーム3~「ワールドの価値を伝えるための表現の工夫」
慶応大学湘南藤沢キャンパスにて112名の現役大学生にアンケートを実施。アンケートでESGに関する意識の程度を理解した上で、ESGレポートにおいてどの分野を重視するのかを抽出しました。「アパレル商品を購入する際に意識することは?」という問いに対して「企業・ブランドの社会的イメージ」を意識しているのは半数に迫る47%、また、ESGへの意識が低い人でも労働環境や多様性には関心が高いということがわかった上で、ESGレポート作成の重点ポイントとして「労働環境」「多様性」「環境への配慮」の3点をワールドグループ内の具体的な事例と共に記載することを提案しました。こちらについて、髙橋さんは「学生にしかない視点を取り入れていてプレゼンテーションとして切り口・戦い方が上手い。さらに具体的な提案があれば、なお良いと思う」と期待を込めて評価しました。


チーム4~「ESG Presentation」
「環境」「社会」「ガバナンス」それぞれにおいて、ワールドグループと競合他社(グルーバル企業含む)を比較。競合他社の知見を活かしてワールドグループができることは何かを抽出・提案しました。環境においては「ゴミの削減」、社会においては「女性の経営陣へのパイプライン」、ガバナンスにおいては「情報の透明性」に焦点を当てました。当社のサステナビリティプランにおいてはどこを補完すべきかという問いに対して「環境についてはファッション業界は他業界に比べて遅れている印象なので、そこが改善点ではないか」という意見でした。


チーム5~「Road to a Sustainable Lead time」
現在ワールドが取り組んでいる「国内生産」と「サプライチェーンのデジタル化」を活用した商品供給までのリードタイムの短縮に注目。これらをより強調し、さらに可能な限りローデーターも開示することを提案しました。また、79%のESG投資家が、競合他社とのESG実践レベルのベンチマークとして公式レーティングを利用していること( * MSCI-Investment-Insights-2021-Reportより)にも言及し、ESG戦略においての重要性を示しました。


プレゼンテーションを終えて
鈴木社長からのコメント

「ストレートに活かせることもあり、とても参考になった。我々も一歩一歩ではあるが取組んでいきたい。また、学生のみなさんと直接お話をする場面も久しぶりでとてもいい刺激をもらった。これからも様々な学びを通じて有意義な学生生活を過ごしてほしい」
髙橋啓介さんからのコメント
「ESGは手探りなところがあるが、投資家評価だけでなくワールド自体を好きになってほしいという想いから様々な施策をしていく必要を感じている。みなさんへのアドバイスとして、元コンサルタントの視点も含めてひとこと。プレゼンをする時に大切なのは、何で勝負するかを定めること。どこに筋を通すのかを明確にして自分の仮説を伝えた上で実行提案をしていくことが大切だと思う。今回の取組みを通じて少しでもワールドを好きになってくれたらうれしい。これからもよろしくお願いします(笑)!」

吉田玲子さんからのコメント

「保田先生のご指導もあり、最初の段階から仕上がりを楽しみしていたが、期待以上のものを出していただき、チームそれぞれのカラーも出ていて、やってみてよかったと思う。少しでもみなさんの将来の役に立つような成果につながったらいいなぁと思うし、みなさんがこれから洋服を選ぶ時にこの内容を生かしてもらえたらと思う。ありがとうございました!」
学生たちより

発表直後に学生のみなさんに今回のワークショップの感想を伺いました。抜粋してお届けします。
「実践的な学びになった。論文や本を読むだけでなく実際のCEO視点であったり、プランを作る立場になったときに、ステークホルダー全体にどういうインパクトを与えたいかという姿勢で取り組めたのが学びになった」
「もともとアパレルに興味がありワールドでバイトしており、その頃に改善したほうがいいと感じていたことをベースに組み立てた。消費者目線で思っていたアパレル業界と環境への疑問を今回のワークショップを通じてCEO視点・企業視点で考えられたことが大きな学びだった」
「ESGという正解がない課題に対して向かいながら、社会人であっても学生であっても、様々な人のことを考えながらプランを作れたことにワクワク感を感じた」
「最初にサステナビリティレポートを読んだときは半信半疑だったが、キックオフの9月に髙橋さんのプレゼンを聞いて熱意を感じて、火が付いた。今日まで調べてきたが、まだまだ分かっていない部分が大きい。個人的にも取り組みたいし、ワールドが好きになった」
「大学の授業ではインプットが多く、なかなか社会と触れ合った上でのアウトプットは少ないので、こういう機会を頂けて良かった」
「プランを作る際、自分たちなりの視点はどこなのかということが難しかった。また、最終的に消費者が商品を購入してくれるのかということを目的にした時のアプローチが難しいと感じた」
――ワークショップを終えて
ワークショップ直後、ゼミご担当の保田先生と人事責任者の吉田玲子さんが学生たちがプランを作成するプロセスの中で明確な解がないことに取り組むことの大変さに直面していたと振り返っていました。そして「今回やってみたことは、彼らが4,5年後くらいに社会人になった時、本当の意味でどういう取組みだったのかがわかるのかも」ともおっしゃっていました。答えがないことに取組むこと、さらに導いた答えは時代によって常に変化していくこと、それでもその時々の最適解を自分たちで導き出し、提案し、実行していくことの難しさは社会人になってからも続きます。今回の学生達との学びは、グループメンバーにとっても良い刺激になったと感じました。






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