新期直前企画! Z世代との‟やらかさないための”コミュニケーション術 後編
日に日に春めいてくる3月後半。いよいよ2週間後にはワールドグループにフレッシュな新入社員が仲間入りします。
今月の特集では、来月より新入社員を迎えるにあたり、2000年代に生まれたZ世代社員のみなさんと互いに気持ち良くコミュニケーションを取るためにはどうしたらよいかを考えるべく、緊急鼎談「Z世代との‟やらかさないための”コミュニケーション術」を前後編に分けてお届けしています。
ご参加いただくのは、ファッション業界の求人プラットフォーム「READY TO FASHION」で代表を務め、学生とのコミュニティを運営している高野 聡司さん、株式会社サイバーエージェントで新卒採用を担当し、ご自身もZ世代の宮内 大輔さん、そしてワールドグループで新卒採用チームのリーダーを務める前川 亜紀子さんです。
前編ではZ世代の価値観について。何を大切にしているのか、上の世代に対して感じている違和感など、‟違いを知る”ところから紐解いていきました。
後編では、互いの違いを知り、受け入れた上でのコミュニケーションの在り方やあるべきスタンスについてさらに話を進めます。

左から)宮内 大輔さん、高野 聡司さん、前川 亜紀子さん
高野 聡司 /株式会社 READY TO FASHION 代表取締役 (写真中央)
広島県広島市出身。1993年生まれ(さとり世代)。学生時代にファッションメディアのマネジメントや取材/ 営業を経験。その繋がりからファッションをテーマに活動する学生団体の集合体「fashion community1.0」を立ち上げる。その後、ファッションEC を扱うルビーグループに入社。新規事業部にてファッションメディア「The FLAG」の立ち上げに関わる。2016 年11 月に株式会社READY TO FASHION を立ち上げる。趣味はネコと遊ぶこと。
宮内 大輔 /株式会社サイバーエージェント AICG部門 HRBP (写真左)
静岡県駿東郡出身。1996年生まれ(Z世代)。2019年に株式会社ラフール(ヘルスケアSaaSベンチャー)に新卒1期生として入社。SaaSプロダクトローンチ初期の新規開拓営業を経験した後、人事に異動。拡大する組織の中で、幅広い職種の採用を経験。2022年9月に株式会社サイバーエージェントに転職し、CyberHuman Productionsの新卒採用の立ち上げに挑戦中。趣味は動画制作。
前川 亜紀子 /株式会社ワールド 新卒採用リーダー (写真右)
兵庫県宝塚市出身。1983年生まれ(はざま世代)。大学卒業後、株式会社ワールドに入社。SPARCS推進、ピンクラテのエリアMD、メディテラスの店舗MD、OPAQUE OSAKAの館長など、入社10年間は店舗運営に従事。その後グループの様々なキャリアを経て2020年より現職に。趣味はお酒を呑むこと。
会社に求めるものは明確なヴィジョンと社会貢献
――前編では、就職活動の時点で企業側の個性やスタンスが見えるという話が出ていましたが、そもそも就職する企業を選ぶ際、学生のみなさんは何を重視しているのでしょうか?
宮内 大輔(以下、宮内)
そうですね。自分の場合は企業理念を最初に確認していました。その後に、企業がどれだけ社会貢献しているかやヴィジョンを重視していました。どの企業であれば自分が社会に貢献できるのかに興味ある学生は周りにも多かったですね。学生の頃から環境問題やSDGsについて学ぶ機会はあったのが影響かもしれません。
――そのあたりは企業のホームページなどをみて?
求人メディア等の媒体では、学生の興味関心を踏まえて企業の社会貢献や社会的責任としての取組みやスタンスを押し出しているので目にも触れやすいです。健康や医療、脱炭素などもよく目にした印象です。
――高野さんの頃はいかがでしょうか?
高野 聡司(以下、高野)
僕が学生だった頃は、時代的にはインターン制度を取り入れる企業が多く出てきた頃でした。僕もインターンで働いて会社にそのまま就職したんですが、実際に就職してみないとわからないことはたくさんありましたね。ただ、将来的に自分がやりたいことが明確にあり独立を視野に入れていたので、企業への就職は「学びと実験」というスタンスでした。
――なるほど、「学びと実験」ですか。前川さんは?
前川 亜紀子(以下、前川)
学生の頃から、人が物を買うという消費者行動に非常に興味があったので、その観点で就職先を探しました。様々な業界を見た中でアパレルは割とやれることの幅が広く、若手から裁量をもって仕事ができるチャンスも多いと感じました。一方で、おそらく20代で結婚して仕事をやめるだろうとその頃は思っていました。でも働くことに対する意欲は高かった。それであれば自分の好きなことを優先しようと思って、ワールドを選びました。
――みなさん、様々ですね。では逆に、企業側がZ世代の若手社員に期待していることは?
宮内
世代的なところでいうと、デジタルリテラシーの高さですね。最近はAI技術の発展が凄いですが、1からキャッチアップするのは難しいですよね…。ただデジタルネイティブの今の学生はAI技術を使って勉強したり調べ物をしたりしています。知識があるだけでなく実際に使える人材は魅力的です。採用面接の後のフィードバックの際にも「あの子だったら事業の壁打ちができそうだ」と会話に上ります。

前川
同じく、デジタルリテラシーは外せないキーワードです。アパレル企業はIT企業ほどそのリテラシーを直接的に活かせるわけではないと思いますが、変化が激しい業界なので、デジタルへの対応力は今後ますます求められます。変化を楽しめる対応力にデジタルスキルが掛け合わされるといいですね。
コミュニケーションを取る上で重要なのは、共感と心理的安全性
前川
今回の鼎談にあたって、Z世代の社員から聞いたエピソードがあります。入社して間もない頃、平日の閑散とした時間にひとまわり以上年上の先輩とふたりで入店していた時のことだそうです。店舗の掃除で中腰でやり続けないといけない箇所で「ここ、腰にきますよね」と言ったら「仕事なんだから、文句いわずにがんばって」と言われてしまった。コミュニケーションを取ろうと思って、先輩に共感を求めたが「失敗したな」と思い、その後しばらく自分からコミュニケーションをとるのを躊躇したとのこと。このエピソードを聞いた時、私自身もハッとして、気を付けないとと思いました。例えば自分の同期が「中腰、きついよね」て言ったら「わかる~!」と言うだろうけど、相手が新入社員だったら、「でも、それも仕事だからね」って指導する気持ちで言ってしまうと思いました。今なら「そこしんどいよね。慣れるまで大変だけど頑張って」と言います。別に弱音を吐いているわけではなくて、共感を求めていることもあると、受けとめ方には気を付けようと気付きになりました。
高野
突き放されたように感じてしまったんですね。「そんなつもりで言ったんじゃないのに」と思って、その後どうしたらいいのかわからなくなってしまったんだと思います。上下関係があまりなく、みんなで仲良くという中で育ってきたZ世代とコミュニケーションを取る上では、心理的安全性が感じられる環境、つまり居心地の良さを作ってあげるのは大切だと思います。

前川
私たちの世代は、腰が痛いというのは文句だと捉えてしまうので、例えそうだとしても先輩には言えないし、言わないんですよね。先輩に共感してもらうという発想や感覚はあまりないので。いい悪いではなく、そこは世代の違いとしてあるのだと思います。
――世代も感覚も違う者同士がコミュニケーションを取るにはどうしたらいいと思いますか?
高野
先ほど心理的安全性が大事だと言いましたが、僕自身ができていたかというとそうではありませんでした。昔は仕事に集中すると必死になってしまって自分に余裕がなくなるので、若手を含めたまわりの人への対応は結構厳しかったと思います。なので、心理的安全性を感じさせる環境を作るには、前提として上司の側が心身ともにある程度余裕を持つことも大切か、と。これがなかなか難しいのですが。
――確かに上の世代が余裕を持っていないと、円滑なコミュニケーションは難しいのかもしれません。その他、具体的に心がけていることはありますか?
前川
良く言われることですが、やはり「褒めてから指摘する」そして「目標とゴールを明確にして伝える」ということは心がけています。
――「褒めてから指摘する」ということは、他の社員の方からヒアリングした際の意見でもありました。まずは相手の話を聴き、日頃の頑張りを褒める。その流れでできていないことや足りていないと感じることがあるかを聞くと、本人から「こういうことができていない、どうしたらいいかわからない」と話すので「その場合はこうしたらもっとよくなる」というトーンで指導をしているとおっしゃっていました。上からではなく、目線を合わせて対話をすることが大切とのことです。
前川
相手の置かれている状況をまずは理解することですよね。先輩のほうが経験がある分、後輩が置かれている状況や心理を想像できるので、こちらから歩み寄ったほうがいいと思います。とはいえ、無理に合わせようとしないで互いに腹を割って話をするのがやっぱり大切だと思います。
――「腹を割る」といっても、なかなか後輩からは行きづらいですよね?
宮内
そうですね、先輩からのほうがスムーズだと思います。あと、できれば直属の上司からでないほうがよりよいですよね。自分も人事の仕事の中で、新卒と既存社員がコミュニケーションを取れる場を作るようにしています。場所だけ作ってもハードルを感じる人もいるので、僕らのほうで話すためのテーマを決めたりして、コミュニケーションを増やす取組みをしています。
前川
そういう取り組みいいですね。

宮内
上司とコミュニケーションを取る上で難しいのは、人によって異なるという点です。以前の会社の頃は、1年間で数回上司が変わったため、それぞれの上司にあわせたコミュニケーションすることを強く意識していました。現在の上司に対して以前の上司と同じようなコミュニケーションで話をしたら「順序違う」と指摘されたり、「そこまで報告しなくていい」という場合もあれば、その逆もあったり。人によって重視する部分や優先順位が異なるので、その難しさはありました。ですから、なるべく早めの段階で確認するようにしていました。
前川
上司によってコミュニケーション方法が変わるのは、若手に限らず永遠のテーマですよね。経験があればある程度対応できると思いますが、1年目、2年目では「人によって言うことが違う!」と理不尽に感じることもあるかもしれません。でも、個別対応力は上司部下の関係だけでなく、仕事全般において大切なビジネススキルの一つなので身に付けたほうがいいと後輩に伝えてあげるといいと思います。
記号なしメールはNG? オンラインでのコミュニケーション術
――コロナ禍で一気に加速したオンラインでのコミュニケーションですが、気を付ける点はありますか?
宮内
メールやチャットでの比較的ライトなコミュニケーションの際、目上の方から全く記号がないメッセージが来ると、結構こわいと感じます。ひとこと「了解」だけで句読点がなかったりすると、「何か気に障ることをしてしまったのか」と推測してしまいます。
――これは、結構無意識でやっている人も多いと思いますが、逆に何があると安心するのでしょうか?
宮内
「!」ですね。あと、チャットなどのやり取りでスタンプが使われていると安心します(笑)。
高野
「!」も、赤い絵文字のは引いちゃうんですよね。威圧感を感じるので普通のがいい。
前川
ほとんど使わないですね。でも、上司からのメールで絵文字やスタンプって、逆にうざいのでは。
宮内
会社によって文化があるので一概には言えないし、線引きが難しいですね。メールやチャットのコミュニケーションをルール化している企業もあるようです。ただ、コロナ禍の時のように完全オンラインで仕事以外の会話がほとんどない中で働いている中で、チャットも全てガチガチのビジネストーンでくると、息苦しさを感じる人もいるのではないかと思います。何かを確認しようにも忙しい上司への電話はハードルが高く、コミュニケーションが取れないままため込んでいってしまい、孤独感が増して、やる気やモチベーションが下がっていくということはあるかもしれません
高野
「ぺこり」m(__)mくらいがほど良いかと思います(笑)。あと、時と場合によりますが、オンライン会議では上司のほうから顔を出したほうがいいと思います。例えば、1 on 1のミーティングで顔を出さない上司は怖いですよね。オンライン中心の場合は、上司側も「どうしてるかな」と不安だと思うので、ちょっとしたことでもいいから「今、これをやっています」というような報告があるとすごく安心しますね。いずれにしても、上司の側がオープンでいることが大切なのだと思います。

――では最後に、今回の鼎談を通して、ひとりひとりの成長、エンゲージメントを高めながら信頼関係を築いていくためにはどんなコミュニケーションの取り方が大切なのでしょうか?
前川
まずは、Z世代だからと先入観を持たずに対話をするために、一時情報を取りにいくことが大切だと思います。一方で、若手社員は個別対応力を磨くことでしょうか。察する力はユニバーサルスキルだと思うので。彼らの成長が会社の成長だということを伝え、接することが双方にとって大切なことだと思います。
宮内
Z世代の立場から言うと、今の仕事がどうゴールにつながっているのかということをしっかりと自分も理解しにいき、上司の方も若手が理解できるようにプロセスを可視化するということはやった方がいいと思いました。「一緒に登っていく」というスタンスだとZ世代は安心しますし、承認欲求も満たされ、エンゲージメントも上がるのでないかと思います。個人的には、あまり世代間ギャップを感じていないのですが、前川さんが先ほどおっしゃったように、対話をして一時情報をしっかり取りにいくことが大事なのだと思いました。世代が違うから何もかも違うってわけではないので。
高野
すごく俗っぽい言い方をしますが、どの世界でもかしこまりすぎずにおじさんと会話ができる若い子って重宝されるじゃないですか。上の世代の方に顔が売れて仕事がしやすくなったり、企業によっては出世しやすかったりして、ある意味、賃金や給与においてもプラスになることもある。それくらいコミュニケーション能力って大事だということです。自分の世代の価値観だけでなく、違う世代のことを理解して対話ができる力は結果的に自分のためになるんですよね。そのメリットを彼らに伝えてもいいのではないかと思います。コミュニケーション力は全世代共通の‟得するユニバーサルスキル”だと思います。価値感を押し付けず、頑なにならず、かといって気を使いすぎず、まずは寄り添ってみてはどうでしょうか。
前川
寄り添うことはへりくだることではないんですよね。

宮内
確かに。いい言葉ですね。どちらも一方的ではない、ということですね。
――気づきの多い鼎談でした。みなさん、ありがとうございました!
高野・宮内・前川
ありがとうございました!

――鼎談を終えて
今回鼎談にご参加を頂いたZ世代の宮内さん、さとり世代の高野さん、はざま世代の前川さん。それぞれの世代観と視点がありながらも、コミュニケーションの在り方は普遍的だと感じました。相手の立場に立ち、思いを馳せて行動すること。互いに寄り添い、対話し、耳を傾けることで、ちょっとした言葉や態度で生じるすれ違いは回避できます。メールひとつ、送信ボタンをクリックする前にちょっと目を通してみる。仕事を依頼する際や教える際にはやる意味とゴールをしっかりと伝える。否定から入らない。言葉にすれば全て当たり前のことですが、日々の忙しさの中で「言わなくてもわかっているだろう」と伝えられていないことがあるかもしれません。新しい季節。新しい気持ちで気持ちよく社内のコミュニケーションをリデザインしていきましょう。






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